ドラえもん のび太のふしぎ風使い

キーとなるキャラクター「台風のフー子」は原作の方が圧倒的に非人間的キャラクター造型でありながらも人間味が溢れていた。そこに藤子F先生の作画の天才性が現れているなあとしみじみ思ったものの、まあ藤子プロの残されたスタッフも頑張っているとは思うですよ。
▼気になった点
・不思議世界への導入が「地球のどこか」というのがイマイチ納得度に欠ける。のび太が「地球には、僕らの知らない世界がまだまだあるんだねえ」と言うセリフがあるんだが、その一言だけでこの作品世界(風の村やアラシ族の存在)をすべて認めてOKとしてしまうには流石に苦しいんじゃないのか? 例えば「のび太の大魔境」ではアフリカの奥地という設定をドラえもんの道具で見事にクリアして、不思議世界を構築しているし、その他のドラ作品も何らかの形でそういう不思議世界への導入をうまいことやってるのに、このふしぎ風使いではあまりに安易。
・スネオがフー子に執着する理由が薄い。最初に出てきたのがスネオの家の庭だから……というのだけではなあ。それはただ所有権を主張しているだけであり、そこには愛情というものが圧倒的に欠けている。その辺り、説得力薄いです。
・ラスボスが未来からきた時間犯罪者だーっていうのはかなり後付けな印象。藤子F先生が書いた「のび太の日本誕生」でも同様にラスボスのギガゾンビは未来からきた時間犯罪者だったわけだが、そこに至るまでの伏線はたっぷり張られていたので説得力はあった。このあたりの「とってつけた感」というのはちょっとなあ。
以上が気になった点だけど、総合評価としては僕にとっては特に低いというほどまでにはならない。作画がきれいだったし、最後のゆずの歌も内容にあってて良かったと思う。まあ、かつてのドラ映画が持っていた、敵キャラの怖さっていうのを今後はもっともっと出していっていいと思いますよ。鉄人兵団は怖かったし、ポセイドンもめちゃくちゃ怖かった。ああいうボスキャラ出して欲しいっす。あるいはギラーミンみたいなナイスガイ的敵役とか。B