新史 太閤記(全巻)司馬遼太郎

新史 太閤記

新史 太閤記

これも世に棲む日日と同じく、全集で読了。これも500ページくらいあって、なかなか分厚かった。しかも1ページ上下2段組だし。さて、太閤記である。織田信長の後を受け継ぎ、実質的に天下を統一した男、豊臣秀吉の物語である。信長に仕えるかなり以前の部分からスタートし、徳川家康に自分の母親を人質として差し出し和解するところで終わっている。秀吉の最後の12年ほどが、すっぽり書かれていないのである。文禄・慶長の役や晩年の大規模な花見、茶会などは全く出てきていない。この頃の秀吉を、司馬遼太郎は嫌いようで、もうろくしていた、とか、衰えが激しかったというように評しているようだ。だから書かなかったのだろうかなーというところだけど、ここは生涯をしっかりと書ききって欲しかったところ。「逆説の日本史」シリーズを読んでいると、色々な人の描く秀吉像を読んでみたくなるのであった。
全体としては、天性の人たらしと呼ばれた豊臣秀吉の尋常ならざる陽気さ・晴れやかさ・カリスマ性を余すところ無く描いているのは大変読み応えがあり、面白かった。立身出世の痛快っぷりが、今の世の人々にも受けているところだろうというのは、想像に難くない。信長の持たない才能を持っていた秀吉。彼のもとにやってくる武将ことごとくその魅力に魅せられるというのは、いったいどれほどのオーラを持っていた人物なのだろうか。よく会社社長を武将に例える占いとかあるけど、ライブドア堀江社長には、秀吉の持っていた「相手次第では自尊心を完全に捨て去る」という技術が欠けている気がする。新しくて賢い人は、古くて遅れた人を見下げる。たとえ見下げていても、それを相手に全く気づかれることなく、己のやりたいことを実現できるようになれば物凄いだろうなー。
やあやあ、中だるみも無く、痛快にして陽気で楽しい作品でした。B+