戦後野球マンガ史―手塚治虫のいない風景 米沢嘉博

戦後野球マンガ史―手塚治虫のいない風景 (平凡社新書)

戦後野球マンガ史―手塚治虫のいない風景 (平凡社新書)

アマゾンより引用。

内容(「BOOK」データベースより)
戦後すぐから現在まで、少年たちを魅了し続けてきた野球マンガ。井上一雄の「バット君」を出発点として、「背番号0」「ちかいの魔球」等。そして梶原・川崎コンビの「巨人の星」は日本中を熱狂させた。さらに「アストロ球団」、水島新司の作品群、「キャプテン」「タッチ」と多くの傑作を生み、今も読み継がれている。手塚治虫が手掛けなかった世界を、少女誌、青年誌まで目配りして書き上げた、日本初の野球マンガ史。

日本初の戦後野球マンガ史という視点は素晴らしい。内容は上記引用の通りであり非常に丁寧にまとめられていると思う。野球マンガだけではなく、野球マンガを取り巻く環境、ひいては野球そのものを取り巻く環境の変化にも多いに言及しておられて、そのあたりが特に興味深かった。戦前、戦時中、戦後の野球の位置付けはどんどん変わっているのだ。さらに戦後も戦後というだけでひとくくりにすることはできず、戦後すぐ、ベビーブーム、昭和後期、さらに平成へという流れの中で、空き地の減少とともに野球が「数あるスポーツのうちの一つ」の地位になっていったこと、それと「野球マンガ」の関係は密接にリンクしているのであった。そして、野球の地位の変化(実質的には「低下」であろう)によって、巨人の星ドカベンアストロ球団、タッチといった黄金的名作に匹敵するほどの野球マンガは、この平成の時代以降もう現れないのではないか、という内容もあった。この本は2002年9月に出た本だが、それゆえに、ちょうどその時期以降現れた傑作野球マンガおおきく振りかぶって」への言及が無かったのは非常に残念であり惜しかったなあ。B