好き好き大好き超愛してる。 舞城王太郎
- アーティスト: 舞城 王太郎 講談社
- 値段: ¥ 1,575
- はてな: asin:4062125684
病気で死ぬ恋人と、小説家である自分が主人公となっている物語の主軸は、設定こそよくある、よくありうるものかもしれないけれど、その中身はしかしやはり舞城王太郎であった。安易さが無いというか、愛する人が死んでしまうということに対して、実直に、等身大に思考して想像して創造している。そして小説を書くという行為についてのメタ的言及。これは文学論でもある、んじゃないかなあ。そして恋人が死んでから、自分に届く恋人からの手紙。ぐは! このあたりで涙ぽろぽろになってしまった。ベタな悲劇的描写なんて、この作品には皆無だ。悲しくて切なくて苦しくて、なおかつそういう感情をメタ的に見ている自分がいる。こういう状態をきっちり書けるのは、たいしたものだと思う。そして終盤の、恋人のある日の行動。骨の髄まで「わかるなあ〜」という心境になりながらも、それに近いシチュエーションになったことのない自分は「本当にわかるのか?」とも思ってしまう。想像のリアリティに訴えかける恋人の謎の1日は、とても素敵だ。
途中でたくさん収録されているフルカラーのイラストもあってサービス満点であります。絵、うまいなあ。
同時収録「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」も尋常ならざるテンション加減。頭にドライバーが刺さる。そして別の人格が……という冒頭からの展開。舞城王太郎のこういう部分って、なんだか筒井康隆っぽいような気がするんだよなあ。ありえなさ加減とねじくれ具合と、文章のパワーが似てるのかしら。普通の作家と何らかの部分が圧倒的に違う。すごいわあ。A