好き好き大好き超愛してる。 舞城王太郎

好き好き大好き超愛してる。

好き好き大好き超愛してる。

舞城作品にはいつも圧倒的な文章引力とでも言いますか、ズガガガガって読ませるパワーがあるんですけども、本作品も例によってズガガガズガガガと目を引き付けられた。最初の1行から最後の文字まで、止まることなく一気読み。なぜこの作品は芥川賞を受賞できなかったんでしょうか。まあ、他の候補作品を全部読んでいるわけではないから強くは言えませんけども、何らかの大きな賞を取っても全くおかしくはないぜという気はします。まずもってタイトル。いいなあ。目が引き付けられるしインパクトが強いし、ページをめくってみようという気になる。装丁もギラついていてパワフルです。表紙をめくると「LOVELOVELOVEYOU!ILOVEYOU!」という文字が、ハートマークいっぱいのページに書かれております。うーん、いいですな。

病気で死ぬ恋人と、小説家である自分が主人公となっている物語の主軸は、設定こそよくある、よくありうるものかもしれないけれど、その中身はしかしやはり舞城王太郎であった。安易さが無いというか、愛する人が死んでしまうということに対して、実直に、等身大に思考して想像して創造している。そして小説を書くという行為についてのメタ的言及。これは文学論でもある、んじゃないかなあ。そして恋人が死んでから、自分に届く恋人からの手紙。ぐは! このあたりで涙ぽろぽろになってしまった。ベタな悲劇的描写なんて、この作品には皆無だ。悲しくて切なくて苦しくて、なおかつそういう感情をメタ的に見ている自分がいる。こういう状態をきっちり書けるのは、たいしたものだと思う。そして終盤の、恋人のある日の行動。骨の髄まで「わかるなあ〜」という心境になりながらも、それに近いシチュエーションになったことのない自分は「本当にわかるのか?」とも思ってしまう。想像のリアリティに訴えかける恋人の謎の1日は、とても素敵だ。

途中でたくさん収録されているフルカラーのイラストもあってサービス満点であります。絵、うまいなあ。

同時収録「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」も尋常ならざるテンション加減。頭にドライバーが刺さる。そして別の人格が……という冒頭からの展開。舞城王太郎のこういう部分って、なんだか筒井康隆っぽいような気がするんだよなあ。ありえなさ加減とねじくれ具合と、文章のパワーが似てるのかしら。普通の作家と何らかの部分が圧倒的に違う。すごいわあ。A