刀語シリーズと、娯楽小説のコストパフォーマンスについて

このシリーズの最大の特徴の一つは、「高い・薄い」だなあ。その代わり「毎月西尾維新の新作が楽しめる!」というところなんだろうけど。携帯アプリでも月315円くらいでかなり遊べるゲームがある今の時代、毎月このボリュームで月1000円超えというのは非常にコストパフォーマンスが悪い。

いつの頃からか、本というのはそれを使って過ごす時間とそれにかかる費用が、他のメディアに比べて非常に高いものになってしまった。何回も何回も読むならどんどん1回あたりのコストは安くなってお買い得になるが、それだけ読み返すかどうかは作品によるし、何より読んでみないとわからない。この刀語シリーズは1冊3時間あれば読み終えるし、早ければ2時間切る。映画は前売り券を買うと2時間半の作品で1300円程度なので、だいたいコストは同じくらいかな。しかし、ニンテンドーDSのゲームなんかは、3000円で数十時間以上過ごせるものがザラにある。そういうものに比べると、いわゆる娯楽小説というのはずいぶんと分が悪いように思うんだよなあ。紙ベースの小説媒体でしか提供できないものを、いかに高く感じさせないで読者に提供するか、というのは大きな課題なんじゃないかと思うところ。

で、小説VSマンガ、となると、一般的に小説よりマンガのほうが1回読むのにかかる時間は短い傾向にあるが、その分再読率がかなりアップする。そしてボリュームも雑誌と比較して考えると、かなりある。1000円なら週刊少年ジャンプが4冊買えるし、ジャンプ4冊分を全部読むとなるとけっこう、いや相当ボリュームがある。もちろん特定の作品しか読まないというパターンもあるが、マンガと比べても娯楽小説というのはやや分が悪いように思う。

販売部数等の収益構造上の問題が一番大きいと思うんだけど、何とかお得感、せめてお値ごろ感を与えて欲しい。刀語シリーズが面白くない、とは思わない。けど「1冊単体のもので1000円以上払う」にしては物足りないものがかなりある、というのが正直なところ。西尾維新の毎月刊行という新しい試みに対する無形の期待投資、と解釈しても微妙なところ。『化物語』は上下巻で3000円超だけど、こっちはそういう薄さ・コストパフォーマンスの低さは感じないんだよなあ。西尾維新は筆の速さと分量の多さは大きな売りだと思うし、前者の能力は証明済みだと思うんで、こっちのシリーズでも後者を期待したいんだけど、難しそうかなあ。シリーズ全部買うと12000円以上になる。12000円あればニンテンドーDSの新作が3,4本あるいは新作マンガが20冊以上は買える計算になる。うーん。