金鯱の夢 清水義範
金鯱の夢 (集英社文庫) | |
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内容(「BOOK」データベースより)
天正10年。山崎の戦いの直後、羽柴秀吉に嫡子・秀正誕生。慶長5年、秀正・徳川家康連合軍、石田三成を関ヶ原に破り、大坂城の異母弟・秀頼を倒す。時に慶長8年。秀正は将軍となって名古屋に幕府を開く。そして日本の公用語は名古屋弁となった。江戸ならぬ名古屋で花ひらく文化は、政治は、経済は…。泰平と狂乱の「名古屋時代」260年。日本史を縦横無尽にパスティッシュした長編歴史小説。
さくっと読めたオモシロ歴史IF小説。
本能寺の変の後、秀吉とねねの間に嫡男「秀正」が生まれた……というIF物。秀正こそがこの作品で最も重要なキャラクターで、生まれた時期も秀頼より随分早く、しかも健康で秀吉の性質をそっくり受け継いでいるときたもんだ。日本史ファン、秀吉ファンなら誰もが一度は思ったであろう空想を実現してみた物語で実に面白かった。秀正は生まれるんだけど、ちゃんと淀君との間にも秀頼は史実通り生まれる。ここもポイントで、必然的に本妻の子VS愛人の子という形で兄弟対決が起こる。そのとき徳川家康はどっちにつくのか? どうなったのか? 最後の豊臣幕府の栄枯盛衰を読んで、落ち着くべきところにうまく着地しているのが凄い。江戸時代じゃなく「名古屋時代」。それでも「幕末」はやってくる。後半のギュンギュン加速して飛んでいく疾走感は、筒井康隆的な印象も。写楽の謎をこういう風に切り取った遊び方も良し。
名古屋弁が標準語になった日本が、そこにある。 B+