あいのひだりがわ 筒井康隆

これはなかなか面白かった。もう胸がズキズキ痛んで苦しいのである。「泣ける」というのとは少し違う(もちろん泣ける部分も多々あるが、それがメインではない)。なんていうか、心に響いたなあ。主人公たちが独立した自我を持って物語の中を必死で生きている様子がすごくいいなあと。少なくとも僕と同世代くらいの人にはおすすめできる。図書館にはあると思うのでよかったら機会があるときにでも読んでみてはいかがでしょうか。
・鬼才・筒井康隆の力量と小説の軸のズレ加減
なんだかんだいってまだ筒井康隆の小説は面白い。この人の、常識とかそういう世間一般的な「軸」をずらした話はほんと好きだ。主人公、あいは左手が不自由で、その「ひだりがわ」を守るために色々なキャラクターが登場する。じいさんにしろ、犬にしろ、魅力的なんだよなあ。主人公が犬の言葉がわかるというのも面白い(最後にこの能力は……になるんだけど)。そして、多くの登場人物が、それぞれ個別の運命を持ち、物語は収束していく。このダイナミックな展開は俺好みなんだよねー。主人公の成長と、それに伴って微妙に変化する文体もナイスです。A−