だれが「本」を殺すのか 延長戦 佐野眞一

僕は年に何作か、自分の価値観を大きく揺さぶったり、意識に衝撃を与えてくれる作品に出会っている。あるときは「G戦場ヘヴンズドア」であり、またあるときは「うしおととら」であり、あるときは「僕たちの洗脳社会」であったりする。

近年僕は出版業界に興味を持っていて、出版不況と言われる現在の問題点などが書かれてあるのかなと思い、今回、佐野眞一氏の著作をはじめて読んでみた。大きな衝撃だった。非常に地に足ついた取材を積み重ねて、今現在の出版業界の問題点、改善点などが冷静に挙げられていた。段階的に再販制度も撤廃されるべき、という筆者の意見はかなり説得力がある。台頭する新古書店勢力問題も挙げられていて、ブックオフはむしろ再販制度があるおかげで、今の価格構成に出来ているという話を読んで思わず唸ってしまった。ブックオフは、定価の1割で仕入れて5割で売るということを基本にした価格設定だ。再販制度がもしなければ、もう一度出版業界はガラガラポンで大きく状況が変わるかもしれないなと思う。

「だれが〜延長戦」は、筆者の全国各地での、講演を活字に起こしたものがほとんどだ。読みやすさからいえば、こっちのほうは前作のダイジェスト版のような感じなので、人によってはこっちから読むほうが内容的にも理解しやすくてよいかもしれない。

そして、この2冊の本を読み終えたときに、「あぁ、俺って本好きなんだなぁ〜」という思いを再確認した。電子書籍が増えていっても、紙に印刷されたインクの染みというロマンはまだまだ長い間あると思う。そのロマンの魔法が消えないうちに、出版界、なんとかして再浮上してくれないかなあ。作家も頑張れ。出版社も頑張れ。読者も頑張るから。A+