はてなダイアラー漫画名選 藤子・F・不二雄『ドラえもん』−日本一のギャグマンガ!−

藤子・F・不二雄/ドラえもん(1) ドラえもん (1) (てんとう虫コミックス) http://d.hatena.ne.jp/Fujiko/20040418#p2
自分が人生で一番初めに読んだマンガであって、かつ自分が人生で最も数多く読み返している作品がドラえもんです。この作品、面白さに限りなし。コミックス1億部突破は伊達じゃない。いまや富山大では正式に学問としてはじめる先生もいるのであった。(http://www.inf.toyama-u.ac.jp/doraemon/)日本でこれだけ万人が知っているであろう作品を取り上げるのはドキドキするけど、「オラぁドラえもんが好きだあー!」という想いをぶつけて書きます。

僕のドラ原体験を思い出してみると、はじめて単行本でドラえもんを読んだのは、僕が5歳か6歳くらいの頃、身体を悪くして入院しているときだった。母が見舞いに、今はなき中央公論社の「FFランド ドラえもん・第27巻」を持って来てくれたのだった。それまでは「めばえ」だかの小学館の出している児童雑誌で読み親しんでいたというおぼろげな記憶がある。

さてこの1巻、後年のドラえもんと比べるとやはり初期だけあってかなり今と異なる設定がとなっている。ママがやたら優しかったり(ドラえもん登場に驚愕して怯えるのび太に、「おお、よしよし」とかやってるのである。後年のツノが生えてガミガミ説教しまくるキャラとは全然違うので、そこまで読んだ上で改めて1巻を読むとまた笑えるというものだ)、しずかちゃんが全然優しくなかったり(ジャイ子と一緒になって、首吊り状態ののび太を笑ってる。ひどい)、何よりドラえもんの造型が違う。ずんぐりむっくりでやたら図々くて攻撃的だ。このあたりを読んでいると、設定というのは時代が変化するにつれて変わるものなんだなーと想う。

当時、漫画家として若手から中堅あるいはそれ以降への過渡期にあった藤子・F・不二雄がその才能を存分に発揮している初期ドラえもんは本当に油断ならない。ブラックなセリフやシーンが満載で、そのニオイが実に素晴らしいのである。「買ったばかりのバットの、なぐり具合を試させろ」やイカレ眼で「ちょうちょ、ちょうちょ、ヒーラヒラ」などあど、枚挙に暇がない。

また、一つのコマの中でのび太ドラえもんがいるとき(または他のキャラでもよいが)、のび太が変なセリフを言った(「ボケ」をしている)ときの、ドラえもんのシラケた表情も絶品である。この「ボケ+シラケ」の構図はその後もずっと、キャラが異なってもよくあるので注意して読むとそのシラケっぷりとの温度差がすごく面白い。……とまあこういう側面もありながら、やはり児童マンガの大作としてのドラえもんという面ももちろんある。親が子供に読ませるのに適していると思われるような「悪いことはしてはいけない、ずるいことはやってはだめだ」といったようなメッセージ性もきちんとある。このあたり、当時彼自身も親という立場だったということも影響しているだろう。

藤子・F・不二雄ドラえもんに対する情熱はその後もどんどん高まっていったようで、こんな言葉を残している。

僕はまだ描き尽くしたとは思っていない。徹底的にあと一滴も絞れないというところまで、絞って描いてみたいんです。『ドラえもん』の通った後は、もうペンペン草も生えない、というくらいに、あのジャンルを徹底的に描き尽くしてみようと。後になって、他の人が描いて、ああ、まだあの手があったか、というのは悔しいからね。

彼があと10年、いや5年でも生きていたならば、と心から思う。嗚呼、単行本未収録作品がたまらなく読みたい! です!