暁の歌 藤田和日郎短編集 藤田和日郎

暁の歌-藤田和日郎短編集 2 (2)

暁の歌-藤田和日郎短編集 2 (2)

3月頃に出た、藤田和日郎の短編集。いやー、面白かったわ! エンターテイメントと爽快なる感動がある。「美食王の到着」「ゲメル宇宙武器店」がお気に入りです。藤田の本領発揮! という感じなのは、「自分の力だけではどうしようもないもの」に対する抗いを描いてるところではないかと思うようになってきました。その「どうしようもないもの」に対して己の限界まで挑み、自分にできる最善のなすべき事をただただ為す、と。するとそこには強力な味方、理解者がいて奇跡が起こるかのように大団円を迎える、という構造。「自分にできる限界まで、ギリギリのギリギリまでひたむきにギリギリ頑張る」ということを素直にカッコイイものとして描いているところが本当に爽快だ。美食王の到着なんて「自分が犠牲になって食べられる」ことで、憎い相手の命を奪うということを考えて、それを実行しているんだからなあ(んでまたこの「食べられる」シーンがすげーのね)。これはもうね、ド演歌の世界ですよ。魂ですよ。もう2作品、「瞬撃の虚空」「空に羽が」は「孤独な闘いを続ける者と、その理解」というテーマがあるのかなーと思った。これはこれでうしおととらの頃から続く藤田の得意テーマなので読み応えありまくり。藤田の描くキャラは、男も女も、泥臭い。人間だ。しかしそれが、とてつもなくカッコイイのだ。日本一カッコよくじいさんを描ける作家、藤田和日郎。素晴らしいです。A