秋日子かく語りき 大島弓子
大島ファンの友達からオススメということで借りて読んでみた。いわゆる「花の昭和24年組」の人ですな。今までほとんどこの人の作品は読んだことがなかったので、非常に新鮮だった。なんというか、かなり哲学的な印象だ。作者はあとがきマンガにおいて、「夢で見たものを(そのまま)マンガにしたものもある」というようなことを書いていたので、なるほど精神的な要素がガンガン入っているわけだなと納得した。しかしながら夢をそのまま投げっぱなしたものというわけではなく、読み応えのある作品に構成されているのである。今回借りたものは古い作品が多かったので、やっぱり絵は「いまどき」ではないしセリフまわしの日本語も、今の語彙感覚とは少し違ったりしている。しかしマンガの面白さは、そういう現代性だけにエッセンスがあるのではない。断じて、ない。セリフ、絵、ストーリー、コマ割、ページ内に描かれる全要素を総合的に合わせたもの=「マンガ力」が面白さのエッセンスなのだと思う。セリフや絵が古臭いものは、確かに読みにくい。しかし大島作品には、それを補ってなおあまりある素晴らしい読み応えのある作品が多いのだ。「多い」と書いたが一読した印象では「これはあまりにもひどいな」と思うものは全く無かった。短編が多いのに密度が濃いのだ。最近はマンガあんまり描いてないみたいだけど、他の作品も読んでみたくなった作家だなーと思った。B+