素晴らしい世界 2巻 浅野いにお

素晴らしい世界 2 (2) (サンデーGXコミックス)

素晴らしい世界 2 (2) (サンデーGXコミックス)

ああ、これは非常に面白かった。生きているということ、生活するということのリアリティを、カラリとした描写で表現したこの作品は、今までにありそうでなさそうなマンガだと思う。サンデーGX吼えろペンで知った雑誌だけど、変な(いい意味で)才能が集まる場所かもしれないね。「どんな話なのか」ということはちょっと説明しにくいけど、色々な(無関係の)人間の、それぞれの生活を描写した物語だ。ホームレス、イヌ、浪人生、料理人、高校生。様々な立場で生きている色々な人。生きていると、いいことがある日もある。少なくとも日本では、そういう人の方がまあ多いといっていいだろう。そんな世界の、そんな人々のお話。

独特だなと思ったのは、登場人物の目である。瞳。これが「普通の目」なのだ。少女マンガのように目に星はなく、少年マンガのように炎もない。ま、炎は今の少年マンガは滅多にないけど。要するにただの黒目なのだ。マンガにおいては、目は表現の根本に関わるツールだ。それをただの黒目(普通に真っ黒に塗りつぶされた目)にしてしまうということは、「感情をそこでは表していません」という暗黙の意思表示につながる。しかし、その代わり、唇の動きがかなり細かい。微妙の「微」といってもいいだろうか、そういう部分を見事に表現している。「ああ、こんなときにはこんな口になるよな」ということがすごくわかる。

しかし、一つ違和感があったシーンもある。116ページ2コマ目。右利きの女性が右手で酒(栓をひねってあける式のもの)をもって、左手でねじるシーンがあるが、そこに違和感があるのだ。普通、右利きの女性は左手のほうが握力が弱いし、やりにくいはずだ。左手で持って、右手であけるだろうと思うのだが、どうだろうか? 他はポーズについてはほとんど生々しいのですごいと思った。190ページ。ホームレスがベンチから落ちて倒れているシーンでは、ホームレスは左手を下敷きにして倒れている。「辛くて意識がなくなった」ということが如実にわかる描写である。普通、左手でも右手でも、手を下にして寝転んでいると、手がしびれる。しかし、辛いとき、肉体的にしんどいときには、そんなことには意識はいかないのだ。次のページでは、口から泡ふいてるし。そういう生々しさを感じた。1巻と連動して読むと吉だなあ。B+