ブッチュくん オール大百科 天久聖一 タナカカツキ

ブッチュくんオール百科

一見、昭和の藤子不二雄作品のような絵柄である。しかしこれはパロディではあるが、オリジナルキャラである。ものすごく大きな唇をした、宇宙からやってきた謎のキャラクター「ブッチュくん」の物語である。主人公のキャラ設定から構成、脇役キャラの配置まで、実に藤子不二雄作品を踏襲している。のぼ太、しずかちゃん、ジャイアン、スネオにあたるキャラクターもちゃんといるところが細かい。
しかし、物語はドラえもんやキテレツのように、明るく楽しいというものではない。カラっとした雰囲気をもちながらも、ひたすらに不気味である。この本は「オール大百科」と銘打っているだけあって、設定やバックグラウンドがめちゃくちゃ緻密に書かれているのが凄いところ。ちなみにマンガの「ブッチュくん」の作者は「無事故無事雄」である。後日談として描かれた「ヨン太、夏の幻影」は衝撃の一言。
なんというか全編通じて、笑うのと笑うに笑いにくいブラックユーモアが散りばめられていて凄い。完成度はかなり高いです。藤子不二雄フォーマットをここまで別の形で昇華させたものは他にはない。「バカドリル」コンビが放つ渾身の1冊。君はブッチュくんの唇に惚れるか！　B+