魔法遣いに大切なこと〈1〉夏と空と少女の思い出 枯野瑛 山田典枝

岩手の遠野に住む高校二年生の菊池ユメが、夏休みに魔法遣いの仕事の研修のため上京する。本作の世界では、魔法遣いは公務員として社会に携わっているという設定だ。「魔法遣いにとって大切なこととは何なのか?」ユメはそれを考えつつ、東京で夏を送ることになるのであった……。
いやいやーこの物語はなかなか心地よい感じがしていいです。挿絵描いてるのはよしづきくみち氏で、パステル調の色使いの表紙が、かわいくなおかつ上品な印象。一人の人間がうんうん悩みながらも成長していく様子を見るのは心暖まったり感動したりする。ユメの師匠になる小山田先生は「とにかくかっこよくていい人」ということでキャラが立っている。このあたりは、マンガ版と読み比べるとなかなか面白いのだが……(マンガ版は、わりと過去のトラウマ全開キャラになっている)。読みやすくてホンワカする物語であった。「富士ミステリ文庫」ということでミステリー色あるのかなあと思うとそこはちょっと微妙だが、物語の展開上必要な「謎解き」は作中できちんと行われているので一応ミステリーの範疇になるのかなあ。ユメが魔法を遣うクライマックスシーンはなかなか迫力があってよかった。A-