天才ファミリー・カンパニー スペシャル版 1巻 二ノ宮知子

のだめカンタービレ」で大ブレイク中の二ノ宮知子の、10年前(1995年第1巻発売)の作品である。このデラックス版は全6巻。主人公・夏木勝幸はエリートの道を目指す天才高校生。順調な人生を歩んでいるはずが、母親の再婚により家にやってきた田中親子のせいで生活がテンヤワンヤに……というストーリー。まだ1巻だけしか読んでいないので、続きが楽しみだ。
とはいえ、「のだめ」と比べると個人的にはやっぱり「のだめ」の方が好きかなあ。「のだめ」には音楽と魅力的な登場人物達による、なんともいえないむずむずしたストーリーのヒキの強さがあるけど、こっちはそれがあまりない。突飛な人物達に主人公が振り回されながらもアレコレ考えたり成長する……という構造は「のだめ」と似ているが、引き立ち度合いが違うというか、なあ。

あと、絵に関しては背景がホントに真っ白に近いというのが気になった。なんでこんなに背景が白いんだろう(描かれていない、ということ)。必要最小限というか、白すぎてむしろ読者の想像を促すパワーも足りていないと思う。「ここはこういう地形なんだろうなあ」とか「こういう構造の家なのかなあ」とかいう想像が、なかなかできない。ううん、作者は背景に興味がないのかなあ。それとは対照的に「ジョジョの奇妙な冒険」は、全コマに必要な分の背景や効果線がバッチリ描かれてある。それはとても迫力があるものであり、絵から出てくるパワーが違うように感じられるのである。「背景より人間を描きたい」というのは、多分多くの漫画家にとってそりゃそうだろうとは思う。そして人間を描いて、物語を紡ぐ。しかしそのためには、背景というのは非常に重要なツールなんじゃあないだろうか? ある場所である人物が泣く、笑う、怒る。そこはどういう場所なのか。部屋の中なら、何が置いてあるのか。外なら、天気はどうなのか。足元は土か、アスファルトか。「なんとなくのムード作り」以上に、背景は重要な意味を持つときがあるだろう。卒業式や入学式に、バックに桜が咲いている、散っている。クリスマスに雪が降っている。そこには意味がある。そういったものが本作品にはあまり無く(少なくとも1巻段階では)、どうなのかなあと思った。このあたり「のだめ」や他のマンガと比較してみても面白いかもしれない。ジョジョはホントすごいよなあ、バック処理。

話が背景の話に大いにそれた。とりあえず最後までこの物語に付き合いたいとは思います。B