幕末新選組 池波正太郎

新装版 幕末新選組 (文春文庫)

新装版 幕末新選組 (文春文庫)

永倉新八を主人公にし、永倉視点で見た新選組の活動を描いた物語。文庫版で400ページくらいあったけれど、するすると読めてしまった。さすがは池波先生である。池波作品の魅力のひとつである「食べ物がウマそう」という描写は本作では残念ながらあまりなかったが、酒を飲むところや芸者遊びなんかのシーンは実に楽しそうであり、ウマいなあと思った。数多くある何気ない会話シーンも、思わず心を打つセリフや記憶に残る本質をえぐる言葉がポンと出てきて油断ならない。

描写等の技術的な部分はそれはそれとして、やはり永倉新八自身がすごく好感の持てるさっぱりとした、非常に気立てのいい男として描かれているのがいいなあ(まあ主人公だからというのももちろんあるけれど)。好漢というものですね。「我々は近藤さんの家来ではない。同志だ」と言うところは、去年のNHK大河ドラマ新選組!」を思い出すところであります。というかそもそも僕の中の永倉新八のイメージはほぼ完全にぐっさんになってるからなー。来年テレビでやるという「新選組!」の続編には、ちょろっとでもいいから後日談としてぐっさん永倉に出てもらいたいところであります。

江戸で、京都で、女をめぐり藤堂平助と一悶着あるが、後に和解して友情が芽生えるシーンはなかなか泣ける。やっぱりこの幕末という時代を構成したメンバーは、どいつもこいつもキャラが立ってて魅力的だなあ。終章あたりの老人となった永倉の伊藤博文に対する評価もなかなか面白い。全編見所、読みどころたっぷりの1冊でした。B+