アイデン&ティティ―24歳/27歳 みうらじゅん

アイデン&ティティ―24歳/27歳

アイデン&ティティ―24歳/27歳

出版社/著者からの内容紹介
ブームも去り、中島の率いるバンドも進むべき道を模索する。そんな悩める彼の前に、ボブ・ディランジョン・レノンオノ・ヨーコが現れて…。ロック魂を追求した表題作と「マリッジ」二作品を収録。

大槻ケンヂの「リンダリンダラバーソウル」「ロッキンホースバレリーナ」とともに、「バンドブームとロックと私」ということについて想いを綴った作品である。みうらじゅんの本作品は、とりわけ「ロックと自分とは何か!?」ということを追求しているように思える。唐突に、しかし当然のよう出てくるボブ・ディラン。マンガ上の表現でも霊的な存在と実際の人間としての存在の中間的なものとして描かれていて、このあたりかなり興味深かった。他の人には見えず、主人公だけに見えるボブ・ディラン。劇画調なら暗くて重い感じになってしまう可能性があったが、みうらじゅんの独特にゆるい、それでいてしっかりしたタッチの線で非常にユーモラスに見える。「ロックとは何か!? 自分とは何か!?」を追求するゆるいタッチの熱血、なのであった。面白かったなあ。長髪とメガネでどこかみうらじゅん本人を連想させる風貌の主人公は、バンドブームに翻弄されながらも、社会と自分の接点を探し、女性に愛を求め、さまよう若者であった。24歳・27歳。第二次「むずかしいお年頃」って感じですよな。
「マリッジ」という同じ主人公を据えた物語には、ボブ・ディランではなくジョン・レノンとヨーコ・オノが出てくる。メジャーデビューと恋人の留学による別離、そして再会。「愛」というものについて、想いのたけを、ぎゅうっと絞ったような物語だった。いい作品です。文庫本サイズなので携帯にも便利。B+