映画クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃

アマゾンのレビューではなんか評価が低かったけど、僕はけっこう、というかかなり楽しめた。ただ惜しいなーと思うところが色々あったのは確かだ。この作品では「3分後の未来」で「3分以内に怪獣を元に戻さなければならない」「変身は正義のエネルギー」「変身後の世界であったことは、怪獣を元に戻すと野原家以外の人の記憶も消える」という「ルール」がある。このルールをうまく使えばもっともっとダイナミックで緊張感のある舞台になったのではないかなあと思ってしまう。終盤は「3分」という時間制限が実質的に無くなってしまっているし、「3分経ったらどうなるんだ?」という素朴な疑問を解消できていない。このあたりのルールの不徹底が、惜しいなあと思ってしまう。

そして「変身して世界を救う中毒」に陥っていたひろしとみさえが、しんのすけへの愛情のために、あっという間にシャキっと元に戻るのも都合が良すぎるというか、プロセスの省略が大きいのではないかと感じた。世界を救うのに夢中になったひろしとみさえ。私生活は荒れ放題になっていて、ゴミ袋が散乱している状況を見た幼稚園の先生が「そういう(世界を救う)ゲームに夢中なのね!?」としんのすけにいっていたように、なんだかネットゲームに夢中になってずっと引きこもっているような人間の「ぞくっとする怖さ」を描けていたのに、スっと戻ってしまうというのは惜しい(そしてそれを見て何もしないミライマンというのも、実はラスボス・黒幕的存在なのかなと思ってしまったくらいだ。あのシーンは本当に怖い)。その立ち直りのプロセスは、もっと深く描いて欲しかったなあ。オトナ帝国におけるひろしの回想シーンが珠玉の出来であったのだから。

とまあ、惜しいところを色々書いたけど、それ以外は概ね面白かった。冒頭のみさえのバタバタシーンも楽しいし、野原家の人々の変身シーン等もカッコイイ。特にみさえはえらいカワイくて胸がボヨヨンになっていて凄いと思った。こういう「特撮、ヒーロー物のお約束」を前提とした物語ってちょっと「ミスターインクレディブル」にも似てるかなあという印象だった。主役も家族という点で共通しているしね。アクション仮面とカンタムロボとブリブリざえもんが登場するシーンは燃えます。怪獣もバラエティに富んでいて楽しい。ギター侍もものすご久々に見た。

クレヨンしんちゃんという作品の「なんでも飲み込める」感はかなり大長編ドラえもんっぽくて、旧ドラの大長編で描けなくなっていた色々なことが、クレしんの映画では描けている……ような気がするね。B+