NHKにようこそ! 滝本竜彦
- アーティスト: 滝本 竜彦 角川書店
- 値段: ¥ 580
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ひきこもりの心理描写についての是非は色々あると思うが、自分としては現状のエンターテイメント的な作品でしっかり向き合って描けている作品はこれが頂上のほうに位置していると思うし、作者のあとがきでこれを書いてから小説が書けなくなった、というのも分かるなあという迫力があった。入魂とはこのことだろう。「命を懸ける」ということに対する心情のあり方には、素朴にけっこう共感したなあ。この作品が書かれた時期を考えると、主人公はひきこもり的体質と、ニート的体質が混同されているような感はあるが、当時はまだニートという言葉は一般的ではなかったような気はするし、分類としては2002年1月当時にしてはひきこもりに区分してよいものだったのではないかと思う。まあ自分自身のメンタリティとけっこう共感するところもあるし、そういう点でちょっとは贔屓目に見ているのかもしれないけれど……。
他にも、エロスとバイオレンスとドラッグに関する描写にはけっこう笑ったし(今のところ、通販で買った合法ドラッグをここまで詳細かつ効果的に描いた小説を僕は他に知らない)、岬ちゃんと佐藤の終盤の、命を懸けたひりひりするやりとりには泣きそうになった。分量の割には(文庫版で320ページ程度)幅広いテーマを扱っている点にも、凄いなーと思う。エロゲー、ロリコン、ひきこもり、宗教、ドラッグ、恋愛、自殺など、多岐に渡る分野が錯綜して入り乱れる本作は、読み応えがあった。ラストのちょっと前進した感じも、さわやかで良かったです。A-