女の子ものがたり 西原理恵子

女の子ものがたり

女の子ものがたり

西原理恵子の出力バランスが、今ものすごく、いいと思う。去年か一昨年くらいからものすごくいい。というのは、作家としての資質が「毎日かあさん」シリーズとこの「ものがたり」シリーズで見事に2つの方向性で開花しているからだ。まあ開花はもともとしてたと思うけど、より研ぎ澄まされているというか。ギャグと親としての心の揺れ動きが表現されている前者と、自伝的物語としての文学性を備えた、切なさと悲しさとやさしさに溢れる後者。これまで色々な作品で「ごった煮」的に表現されていたこれらの多くの才能が、濃度を高めて各作品に出力されている。もうなんだか一読者としては「うわあ、なんていいものを見つけたんだ! ほんとにいい出力方法を見つけたなあ」と思った。読んで感じるマンガの醍醐味も十分にあるし、心を動かされた。

女の子物語。これはむしろなんだか「友達ものがたり」だったなあ。みさちゃんときいちゃん、彼氏やまなちゃん、のりこ姉ちゃんに抱く複雑な感情。「こんな女の人生をみるのはもううんざりだ」という独白。「みさちゃんもきいちゃんもきらいだけど あんたのことがいちばんきらい」。この思考に至るプロセスの描写。人の心は、とても複雑だ。マンガを読む楽しみと、深みが存分に味わえる1冊。フルカラーで絵のタッチもやさしい感じである。A