竜馬がゆく 司馬遼太郎 全集3冊

出版社/著者からの内容紹介

青春小説の名作が読みやすくなって再登場。前半は、奥手だった幼年期から、剣術修行、脱藩、勝海舟との出会いと海軍塾設立までを描く

相次ぐ抗争で多くの志士の血が流れたが、竜馬の奔走によって大政奉還が実現、日本は救われる。維新政策には竜馬の精神が生きていた

全集で読了。上の引用は文庫版より。全集は2段組約600ページが3冊という分量だった。人生で一番の長編だったかもしれない。文庫本だと8冊くらいあるよねこれ。書くほうもすごいけど読むのもエネルギーいるものだなあ。ただ作者の文章がやはりうまいので、するするするすると読み進めることができた。これ、ちょっとでも読みにくかったらやっぱりどこかでくじけてもおかしくないので、このあたり流石司馬先生としかいいようがない。

江戸へ剣術修行に行くシーンからスタートして、凶刃に倒れるまでを超じっくり描いた名作。高校の頃から読もう読もうと思いつつもその長さに敬遠してしまい、今に至った。で、どうして読むに至ったかというと、2004年のNHK大河ドラマであるところの「新撰組!」にハマったせいだ。これにハマったことにより、幕末の歴史に大いに興味が沸き、司馬作品であるところの「燃えよ剣」「新選組血風録」なんかをググっと読みまして、ますます興味が沸いた次第なのでありました。片や佐幕、片や統幕、思想の異なる二つの側面を知りたくなるのが当然の流れで、新撰組という幕府側の観点を読んだ後は、大きなものではいよいよ坂本竜馬を残すのみということになって、ついに「竜馬がゆく」を読了したのであった。いやあ長かった。

他の司馬作品もそうだが、本作品は長いだけあって登場人物の多さが尋常じゃない。数百人いるだろうなあ。それら一人ひとりについて、名のある者はことごとく筆者の言及が入るというすごさ。まあこの幕末、ついた側と生き延びたか否かによってその後の人生が変わってきまくるところが大きいと思うので、それも楽しく読めた。武市半平太なんか、人物のデキなんていうのはそれこそ桂小五郎クラスの人間だと思うのだが、なにぶん生まれた藩、生まれた家柄、自己の思想に妥協しなさすぎて、その能力に対して悲劇的な晩年になったように思うし、逆に名はあれどさして能力もない薩長の人間が、生き延びた、という一点をもって明治時代になり子爵や男爵になったりしているというのは皮肉ですらある。人間は、その能力如何というよりも、その偶発的な環境により運命が変わったりしてしまうのだなあとしみじみと思った。歴史は教訓を与えるなあ。

特に気に入った登場人物は勝海舟高杉晋作。片や稀有の批評眼を持つ天才、片や疾風迅雷電光石火の男、かっこいいですなあ。西郷や大久保も傑物である。人物に興味がいって、ウィキペディアもけっこう読んで楽しんだ。

これで幕末系の司馬作品の主なものは読了したと思う。分量が分量なのでそうそう読み返すのもしんどいけど、いつかまた読みたい。この物語は、大きくて素晴らしい。A

参考(過去の関連ページへのリンク)

地球にマンガがある限り! - 世に棲む日日(全巻読了)
http://d.hatena.ne.jp/Fujiko/20050923#p1

地球にマンガがある限り! - 新選組血風録
http://d.hatena.ne.jp/Fujiko/20041219#p1

地球にマンガがある限り! - 燃えよ剣
http://d.hatena.ne.jp/Fujiko/20040907#p1

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