コーヒーもう一杯 1巻 山川直人

出版社 / 著者からの内容紹介
明日に旅立つその前に、一杯のコーヒーを。温かく優しいアロマ香る物語集。月刊コミックビームにて好評連載中の「コーヒーもう一杯」の単行本第1巻。


コミックビーム系のいいマンガって個人的に見逃すことが多い。なんでだろうなあ。普段あまりチェックしてないせいかな。

というわけでコミックビームより『コーヒーもう一杯』1巻。読み切り短編集で、こういう形式が好きな僕としては嬉しい。スクリーントーンが使われておらず背景等手描きなので画面が真っ黒に濃いんだけど、ディフォルメされた三頭身のキャラクターや、細かい小道具には雰囲気が非常にマッチしている。

第1話では、恋人と別れた男が後輩にコーヒーの淹れ方を教わりにやってくる。当初はコーヒーのウンチクマンガかなと思っていたけど、全くそんなことはなくて(1話に限りそれらしきものはあるが、以降ほとんど出てこない)、しっかりとした「物語」がある。このしっかりとした物語を軸に、コーヒーが良きアイテムとして毎回登場する。喫茶店で知り合う男女の話だったり、幽霊となった男と出会うまぼろしの喫茶店であったり、豪邸で飲むコーヒーと、路上で飲む缶コーヒーだったり、舞台はさまざまだが、必ずコーヒーが登場する。

225ページで12話と充実の詰め込み具合も嬉しいです。
気に入ったのは、ストレートコーヒーを頼むと恐ろしい妄想をしてしまう『ブルーマウンテンの夢』。ブルーマウンテンを頼んだ瞬間、謎の連中が喫茶店に入ってきて、銃をぶっ放し強制連行され、人肉缶詰にされてしまう……という妄想。筒井康隆感もありゾクゾクした。

他にも、喫茶店で占いがきっかけで出会った男女の恋愛を描いた『昨日の明日』、ある夕立の日に喫茶店にやってきた男への片想いを描いた『夕立さん』、アパートの隣人との恋を描いた『となりの女』がお気に入り。この人の描く三頭身女性キャラクターはとてもかわいいね。1ページだいたい6コマ以上と細かいのに服装もみっちり描き込んでいて大変良いなあと思った。いいマンガでした。A-

作者の公式ブログ地球の生活では、同人誌も通信販売されているようで、好きな作風、空気感が漂うのでそそる。