漱石のレシピ―『三四郎』の駅弁 藤森清

出版社/著者からの内容紹介
胃弱だった漱石が作品にちりばめた食のかくし味!!

吾輩は猫である』の牛鍋屋、『坊っちゃん』で清がくれた金鍔(きんつば)。
作品の中に出てくる洋食と日本の家庭食の意味は?
明治から始まる日本人の激動期を、食文化の視点から考察する!!

何気なく手にとって読んでみるとなかなか面白かった。
夏目漱石が食べたものあるいは作中人物が食べたものなどを、その小説から抽出して解説した本。明治時代を駆け抜けた漱石は、日本の食文化が劇的に変化する瞬間に立ち会っていた。その漱石は、いったい何を食べたのか。

紹介引用にもあるように、様々な作品から色々な食べ物が登場しているが、個人的には「甘いものがすごく好きだった漱石」というのが面白かった。子供と一緒にジャムを舐めて舐めて舐めまくり、月に8缶(当時は瓶詰めではなく缶詰だった)もジャムを消費していたというエピソードがあって驚愕した。ジャムを単体で舐めて8缶というのは、そんじゃそこらの甘いもの好きでも出来ないことだろう。漱石はアイスも好んで食べていたということなので、彼は「やわらかくて食べやすい甘いもの」が好きだったのかもしれない。

幼少時の体験というか生活の影響からか、食道楽というわけではなかったようで、特にイギリス留学時代にはまさにストイックな食生活を送っていたらしく、雨の中公園で硬いビスケットをかじっていたというエピソードもあった。この本の編者も文中で「何もわざわざ雨の中公園で食べなくても、せめて室内で紅茶でも飲みながら食べればいいのに……」みたいなツッコミを入れていたくらいだ。

タイトルに「レシピ」とあるが、レシピそのものはほとんど載っていない点だけ注意。B