へうげもの 4服(巻) 山田芳裕

4服目に入りまだまだ絶好調の本作。時代が変わってゆく様をずずいと描いている。この巻も見所シーンはたっぷりで、何度読んでも楽しめる。
信長が世を去り、秀吉は明智との決戦に勝利。しかし利休(当時は宗易)の助言により、安土城は紅蓮の炎に包まれる。信長を殺したのは秀吉ではないかと推測した主人公・古田左介に対し秀吉は恐るべき回答をする。このくだりは古田が各々の心情を説明しすぎている部分はあるが、名シーンである。部屋から去っていく秀吉は一人、「ようやく泪けた……」と独白する。
その後の弥助と利休の茶室での緊迫感のあるシーンも素晴らしい。暗闇の中で蠢く弥助の目と、震える利休の顔。作者は「場面」を描くのが本当にうまい。絵と同時にかなりの言葉を費やしているので説明過剰とも受け止められるが、これは「わかりやすさ」にも繋がる長所がある。
また、人物の表情を活き活きと描いていてこれがまた非常にうまい。ゴージャスな箱を手に入れてしまった過去を恥ずかしがる左介や、「ノブを殺したのはお前か……?」と詰め寄る弥助、秀吉と家康の戦の和睦に来た左介をもてなそうと必死の表情で踊る家康家臣(なお、この和睦での供応シーンは出てくる食べ物にまた大笑いしてしまう)。その必死さに思わず笑ってしまう左介の「ボヒヒヒ」という笑いも最高である。
そして大阪城においていよいよ官位を授かり古田織部に。OLIVE古田の誕生の瞬間である。また、あの黄金の茶室も登場し、古田の目をぎらぎらと輝かせる。1巻の間に色んなシーンを詰め込んで、作者の「出し惜しみしない精神」を感じる次第だ。秀吉の妹・朝日姫は秀吉と同じ顔しているのも少しおかしかったが、家康もまた達者である。
4巻ラストでいよいよ古田は「そしてそれがしは/この目利き刃を/もって 並み居る/大大名を劈き……/数奇の天下を/獲る!」と宣言。群雄入り乱れる5巻は夏発売予定ということで、洒落た続きを期待したい。A

1,2,3服(巻)の感想はこちら - ピアスする信長、白い安土城、へうげもの!