静かなるドン 83巻 新田たつお

春夏秋冬の季節感なく物語は進み83巻目。マンサンにおけるこち亀的存在(ただしストーリーは続きまくりだが)であるところの本作品、ついに累計4000万部突破である。大ヒット漫画家である。しかし特にメディアに取り上げられることもなくブログで感想書く人も無く今に至る。漫画サンデーという媒体のせいなんだろうか……うーん。新田たつおの「漫画のうまさ」というのは後世もっと評価されるに違いないと思うし、思うからこそここでコツコツ感想を書いているのである。83巻ですぜ。もうドラゴンボールの2倍の長さになっちゃうよ。ワンピースが始まった時点でもう40巻以上出てたんだよね。長期間継続して高い人気があるところも凄いし、構想がどうなのかは不明だが、国内編、世界のマフィア編、また国内編と、メリハリを利かせて舞台と敵を移しつつ、ストーリーを進めているのも達者。

83巻は、近藤静也と白藤龍馬の最終決戦編が引き続き緊迫したムードの中進んでいく。この作品は、いつの頃からか常に恋人である秋野さんがキーマンとなっている。この作品が始まった当初はかわいいお嬢さんといった風貌だったのだが、連載が長期化し、抗争が激化するに従い、彼女の風貌、ムードがどんどん変化しており、聖女、聖母的な雰囲気を醸し出している。すなわち、荒ぶる狂気を心に宿す静也にとっての、救いとなる存在として描かれているのである。言うなれば、「近藤静也の魂の救済の物語」というようになっているのである。と同時に、秋野は相手方、白藤龍馬の母親にもそっくり、という設定であり、龍馬にとってもまた心の母たらんとしているのである。改めて書いてみるとこの構造は凄いなと思う。次巻も必読である。B+