DS文学全集と活字と書籍と。
DS文学全集 | |
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これ、ひそかにかなり売れてるみたいなんですよね。任天堂は相変わらず、枯れた技術の水平思考を具体化してくれるなあと思った。類似ソフトは既に数本、他社から発売されている状況ですが、レビューを読むと「使い勝手」という面での評価がこのソフトは非常に高い。このソフトに収録されている本、家に2,30冊あるけど、これを買って書籍のほうは処分してもいいかもしれないなあ、などと考えている。現代における趣味の多い人間の大きな難題の一つは、スペース節約なり。
DS文学全集:収録作品一覧
収録作品一覧はこちら。まあバランスのいいラインナップといえそう。
『DS文学全集』開発スタッフインタビュー:1
インタビューがまた妙に面白かった。これ読むだけでも面白い。
「1か月本読まず」過半数、高齢ほど本離れ…読売世論調査(読売新聞) - Yahoo!ニュース
で、まあこういうニュースにちょっと触れたいんですが、どうも活字離れを嘆いてそうな老人のほうが本を読んでない割合が高い。視力の低下なども要因の一つかなとは思うんですが、それでも若者が本読まない云々は言う資格は無さそうなんですな。日本語文化、と一口に言いますけども、一昔前の国語的教養であった「漢文」をそのまま読める人は、もう日本に1パーセントもいないでしょう。その時点で明治時代より退化していると、ある面では言えるのではないだろうか。まあ読めりゃエライかって言ったらエラさは関係ないけどさ、偉そうに上から目線で本読めと言われても、所詮は漢文も読めない人の言うことなんだよなー、なんて思ってしまう。夏目漱石は漢詩文を趣味として嗜んでいたが、今の40、50代の作家にそのような国語的教養がある人はどの程度いるのか?
で、DSとか携帯とかPDAとか、紙媒体じゃない「本」ツールの出現で、そっちで「読む」人口は間違いなく拡大している。私も、以前は携帯の画面で長文を読んだり、ウェブ上でコミックを読むのは苦手だったが、今はすっかり慣れた。欲を言えば小さいレッツノートとか、あの辺がベストなんだろうけども、まあ問題なく楽しめる。要は入り口の問題なんだろうなあ、と思った昼下がり。
李陵・山月記 (新潮文庫) | |
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で、上のDS文学全集をアマゾンで見てふと山月記が読みたくなり、本棚をあさった。高校の国語の教科書に掲載されていて、はじめて読んだのが10年前か。青空文庫にも収録されている。
うーん、なんかこう「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」っていうのが、非常に身につまされる部分が大きい。結局のところ、己の行動や勇気を縛るものは、環境が整わない、といった物理的条件のほかには、そういった自尊心と羞恥心という部分も確かにあるように思える。
「人生は何事をも為(な)さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短いなどと口先ばかりの警句を弄(ろう)しながら、事実は、才能の不足を暴露(ばくろ)するかも知れないとの卑怯(ひきょう)な危惧(きぐ)と、刻苦を厭(いと)う怠惰とが己の凡(すべ)てだったのだ。」と虎は言う。何も付け足すことは無い。1942年時点で、現代人のよくある苦悩を端的に指摘しているのではないか。
古典文学を読むと、人間は遥か昔から、その性質においてたいして進歩していないものだなと思う。中島敦の文章は、硬質な美しさがあって好きだなあ。美しく丁寧に削られた鉛筆の先のようだ。
あと関係ないけど、『走れメロス』に出てくるキャラって、皆『男塾』に出てきそうなキャラだよなあ。まじでそう思う。