自虐の詩 DVD

【ストーリー】
森田幸江(33)は、無職で甲斐性無しの葉山イサオ(35)に尽くしている。二人は大阪で一緒に暮らしているのだが、まだ籍を入れていない。幸江がラーメン屋で働きながら生活を切り詰めやりくりしているというのに、イサオは毎日ボーッとして、やることといえば賭け事ばかり。気に入らないことがあれば、ちゃぶ台をひっくり返す。ところが幸江は、周りに何と言われようと、イサオに惚れて惚れて惚れぬいている。

傑作大河4コマ『自虐の詩』映画化。劇場まで見に行こうか迷ったが諸事情あり断念。DVDで堪能した。原作が素晴らしすぎてなおかつ思い入れもあるだけに、映画版はどうなのか心配だったが、悪くはないと思った。ちゃぶ台ひっくり返す演出はマトリックス風味でくだらなく面白い。いや原作の異様にテンポの良い「このやろー」「ガシャーン」の独特の「間」も相当イイんですが。

大筋は原作通りだけど、順番組み立てがちょっと違うか。1本2時間弱の映画としてわかりやすく脚本にするにはこういう形にするのが適しているのだろう。阿部、中谷両氏はきっちり演技しているし、堤監督はプロの仕事をしたと思う。

幸江がイサオに惚れまくっているという積み重ねの描写はもっとあっても良かったかなあ。原作でイサオの足の裏に顔を乗せたりする幸江の「あんたー(ラブラブ)」描写とか、あんなの是非使ってほしかったなあ。まあお弁当作るのもストレートにわかりやすくて良いのですけども、原作の変化球はもっと入れても良かったかなと。

原作後半のある種の大きなうねり、グルーヴ感があまり感じられなかったのは諸処の細かいエピソードをはしょったからであろう、そこは残念だった。それでもなんとかイサオとの出会い、熊本さんとの過去編を描いたのは頑張った。過去編はもっと貧乏さ、苦しさを追求しても良かったかなと思うのだけど、ギャグ、コメディタッチも重視されるべき作品であるので本当に難しい(そういう意味では原作は本当に凄い4コマである)。時間の都合でかなり簡略化せざるを得なかったのかなと思うのは、ラーメン屋の店長と風俗嬢「ユキエ」のエピソードと、隣の奥さんと高額布団屋の男とのあれこれだ。ユキエについてはある程度描かれたが、布団屋はラストで少し出てきただけだった。あの辺も原作で面白かったところなだけに残念。

原作よりいいなと思ったのは、大阪の(舞台設定の)ガラの悪さが見事に描かれている点だ。チンピラから街中の汚さや西日(!)など、随所にオオっと見所があった。このあたりは原作より画面の色が多い分、より表現出来ていたのではないかと思われる。B+

マンガ版原作についてはこちらで語ってます。→自虐の詩・個人的な業田良家 - 地球にマンガがある限り!