センゴク天正記 1巻 宮下秀樹

人間が成長して、化ける物語が好きです。日本橋ヨヲコ作品はそういうものが多いので大好きなんですが、この「センゴク」も大好きです。1巻と最新刊では絵がかなり変わっているなど、描いてるうちに作者も成長する、そういう要素もあったりして本当にたまらない。少年から青年期にかけての時間というものの大きさっていうのは、何とも言えないものがあります。

センゴク、第1部は15巻まで。浅井長政を破るところまでが描かれている。お市浅井長政の関係や、浅井長政の成長っぷりが凄まじくカッコイイ。戦国時代、戦国武将を描いた作品は色々あるけど、「花の慶次」の主人公前田慶次なんかは「既に成長しきって完成された美しさ、華やかさ、格好良さ」が大きな魅力だった。こちらセンゴクの主人公、仙石権兵衛秀久は物語が進むごとにグングン男っぷりが上がっていく。やっぱりアップの絵が力強く魅力がある。そして、「そういうグングン男っぷりが上がっていくまだその先(仕えている先序列)」には羽柴筑前守秀吉、織田弾正忠信長がいるわけで、ある意味「男っぷりのインフレ」がある。羽柴秀吉も戦でしんがりを働き、大成功してから滅法格好良くなったし、織田信長に至ってはもはや現人神の領域。

比較的マイナーな武将がガンガン登場してくるのも好きです。どのあたりがマイナーかというのは難しいところですが、「信長の野望」や司馬遼太郎作品が好きな人は知ってるけど……というレベルのキャラクターはマイナーといっていいでしょう。主人公からしてマイナーだし。斉藤龍興があんなに格好良く描かれているものは他にないですなあ。

天正記編では仙石は色々細かい仕事をしており、信長は本願寺と本格的な戦いがスタートするあたり。本願寺顕如がまた物凄くパワフルな僧侶でありケレン味ありまくり。これからも楽しみです。B+

参考
Vol.93 特集:鼎談『リアル センゴク 戦国時代の真実と虚構を語る』 - サンライズ出版