名前探しの放課後 上下巻(完結) 辻村深月

名前探しの放課後(上)
名前探しの放課後(上)辻村 深月

講談社 2007-12-21
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名前探しの放課後(下) ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス) 凍りのくじら (講談社ノベルス) スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス) スロウハイツの神様(上) (講談社ノベルス)

出版社 / 著者からの内容紹介
思い出してください、青春のせつなさを。
新・学園ミステリの傑作、ここに誕生!
「今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。――自殺、するんだ」
「誰が、自殺なんて」
「それが――きちんと覚えてないんだ。自殺の詳細」
不可思議なタイムスリップで3ヵ月先から戻された依田いつかは、これから起こる"誰か"の自殺を止めるため、同級生の坂崎あすならと"放課後の名前探し"をはじめる――
――青春ミステリの金字塔。

いやーたまらんね。正直たまらん。辻村さんは、個人的に2000年代で作家単位で最もお気に入りの小説家になった。すべてが最終章に向かって収束していく伏線が本当にたまらない。うまい。物語において伏線を回収しながら大きなうねりを上げクライマックスの感動に向かうベタさというのには、それを書くためには物凄い地力が必要なんじゃないかと思うところ、この人は本当に力があると思う。西尾維新も相当好んで読む作家だけど、彼とはまた違った魅力が辻村さんにはある(当たり前だが)。

未来で「クラスメイト」が自殺した、という体験をして主人公は過去、自殺が起きるしばらく前の時間にタイムスリップする。残された時間で、その「クラスメイト」の自殺を回避することができるのか?
というストーリー。「タイムスリップして過去を変える」という大枠の設定においては特に斬新なことは無いものだけど、そこから主人公をはじめとする物語内の人物が重要な「成長」をしていく。

すべては最終章、クライマックスのためにあるといっても過言ではない物語だった。物語のカギを握る作中の重要人物が○○ていて、本当に良かった。

そして、辻村さんは自分の作品に出てきた人物を、本当に愛してやまないんだなということが十二分に伺えるキャラクター配置。これもこれまでの辻村作品を読んできた人間にはたまらないサービスである。特にこの作品では、過去作品に出てきた複数のキャラクターが色々と登場してくれるのでとてもうれしかった。この作者は、読者としてされてうれしいことを、しっかりやってくれるのだなあ。

ただ逆に、本作に限っては、これまでの作品を読んでいないとある人物について設定がよく分からないところがあるので、そこは残念だ。僕は読んでいたからいいけれど、読んでいなくてこれがはじめての辻村作品体験だと拍子抜けしてしまう可能性がある。「僕のメジャースプーン」は前提として読むべきものになるし、「凍りのくじら」も出来れば事前に読んでおかれたい。

それにしても「スロウハイツの神様」といい「名前探しの放課後」といい、最後の50ページ100ページのクライマックスの疾走感、躍動感は物凄いものがある。「えーっ!」と驚かされながらグイグイ引きこまれ、ページをめくる。直球ストレートを自信持って投げられるというのは、それ相応の力が無いと出来ない。この人は最後の締めは、直球ど真ん中ストレートで読者をドキドキさせてくれる。いや、参った。これまでの辻村作品を読んでいるなら評価A、読んでなくてこれがはじめてならBになってしまうかな。

「[本] 辻村深月」のレビュー - 地球にマンガがある限り!

4062145073名前探しの放課後(下)
辻村 深月
講談社 2007-12-21

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