クロスゲーム 1〜14巻 あだち充

クロスゲーム (1) (少年サンデーコミックス)
クロスゲーム (1) (少年サンデーコミックス)あだち 充

小学館 2005-09-02
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出版社 / 著者からの内容紹介
幼なじみは四姉妹!? スポーツ用品店の息子・樹多村光と、バッティングセンター&喫茶店「クローバー」の娘たちが繰り広げる、爽やかで少しせつない青春野球ストーリー!!

しばらくぶりに「なんかイケる感じのあだち充作品」になってきている感がある、クロスゲーム。別に必ずしもアニメ化が「面白いかどうか」の基準ではないけど、タッチ、H2ときて久々にアニメ化もされているあだち作品ということで、少なくともアニメ化に適している、耐えうる質の作品であることは間違いない。やっぱりこの人は、野球ラブコメだよなあ。大ヒット、ホームラン飛ばしている作品はいずれも野球ラブコメだし、やっぱり合ってるんだと思う。

クロスゲーム、章立てで物語が進行しており、1巻から早いテンポの展開。「タッチ」がけっこうじっくり描いてきた人間関係を、1巻分でギュンと進めている。これは驚いた。今の時代の週刊誌のスピード感がそうさせているのか、あだち充が「それまでの人間関係」よりも「そこからの人間関係」を多く描こうとしているのか、原因はわからないけども、早い。一般的に、数巻かけて描く関係に比べると、そういう高速テンポは、話が進むのはいいが、感情移入がしにくくなる。そのあたりの問題を、あだち充は技術と演出でカバーしている。セリフの一つ一つ、会話の一言一言が、タッチの頃よりも鋭く、重く、また時に軽妙でユーモラスになっている。人間関係の変化や構造の奥深さを、セリフや風景描写で魅せるあだち充の演出・技術力は物凄く向上しているんじゃないかと思う。

だからねえ、重要なキャラクターが亡くなってしまうエピソードはねえ、もうかなり感情移入しっかりできてるからとても悲しかった。僕は人間が死ぬというエピソードは、キャラクターの変化や成長のきっかけにはなるけど、そのためにかならずしも必須の要素ではないと思っているので(当たり前だが)、なるべく死ぬ話は避けて欲しいんだけども、死んだ後どう描くがでそのストーリーの説得力や必然性はドンと変わるのもまた認めるところ。

クロスゲームは、重要なキャラクターが亡くなって以降、けっこうな割合で、折に触れそのキャラクターのことを皆が思い出したり、語ったりするんですね。亡くなった人が皆の心の中で生きているっていうのと、死ぬまでには描かれていなかったエピソードが思い出話として挿入されたりと、そういう悲しみ・喜びはしっかりフォローされている。このあたりが、あだち充うまいなあと思うんだよな。

主人公のコウですけども、あだち作品の中では一番好きかもしれない。カっちゃんほど優等生的ではなく、タっちゃんほど品がないわけではなく、いい感じの現代っ子だなと思った。H2の国見も好きだけど、なんだろうな、コウと周囲の人間皆の関係が、気持ちいいんだな。

そして巻が進んで出てくる子が、死んだ重要キャラクターとそっくり、という展開。この造形的そっくり加減はマンガだし、あだちだし別にいいんだけど(笑)性格までそっくり(らしい)というのは凄い。じゃあなぜあのキャラクターは死ぬ設定になったんだーとか、もしも死んだキャラが死なずに物語が進んでいたら、どうなっただろうかなとぼんやりと考える。ありていに言えばもっとドロドロの関係でハードなラブストーリーになっていたかもしれない。そういった物語構造的な疑問が今後見事に解消されることを祈る。まあ、もしあのキャラクターが生きてたら、そのまま結ばれるべき人間と結ばれて、その後の青葉の人生というか性格は、ちょっと屈折するというか、ひねくれたままだったかもなあとは思うので、そういう意味では納得はしてるんだけどね。あ、でも東と出会っていればそのあたりもうまく解消されるんだろうか(しかし、死なくしてはコウが東と出会い、東と青葉が出会うこともなかろうに。いや、難しい。)。

とにかく、非常にいい感じのあだち充的ストーリー展開になってるので、ほんとに期待している。A-

クロスゲーム 14 (少年サンデーコミックス)
クロスゲーム 14 (少年サンデーコミックス)あだち 充

小学館 2009-03-11
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