岡田斗司夫のひとり夜話 大阪第2回
大阪第2回「ロジカルエンターテイメントショー」と銘打って、段々基本的な枠組み、方向性が決まってきた感じか。個人的には「なるほど演芸」といった感覚で聴いている。
イベントのことをブログに書く、ということについて
岡田斗司夫のゼネラル・プロダクツ:「ひとりテレビ」公開と、メールの件
http://okada.otaden.jp/e66468.html
ご本人のブログでこういう話について言及されていたので、うーむと考え込んだ。
でも、「ひとり夜話」イベントの話を全部書かれてしまうのは正直、しんどい。
というのは、一つの話題に最低でも30分以上かけて、徐々に会場を暖機して、最後に「その結論に行くか〜!」と驚かせたいと思っている。そういう話の作りをしているからだ。
だから、数分〜10分ぐらいで読めてしまう内容のダイジェストで最後のオチまでバラされてしまうのは、僕にとってかなり辛いことなのだ。
いわば、ミステリや手品のネタバレされるようなもの、とでも説明すればいいかな?中略
でもねぇ、この件をブログにいま書いてるのは、正直自分でも釈然としないからなんだよね。
とのこと。僕も話の核心部分のネタバレについては基本的に避けようと思うところです。と同時に、「岡田斗司夫の話」というのは「ミステリや手品のように楽しく面白い話」であると同時に一つの「世の中を読み解く思想・意見」としての側面もあると思うんだよね。
で、思想や意見というのは伝播してナンボだろう、という性質もあるからなーと。そのあたりが上記の「釈然としない」ところでもあるのかもしれない。加えて、サイキック青年団のイベントのような、絶対オフレコで人のうわさ話をやってるというものでもないというのもあり。
高度な技術を駆使した話芸によって自分の思想・意見を伝達しているんだと考えると、そのバランス(比重)はどっちなのか? 難しいところです。このブログではとりあえず、結論・ネタバレ的な記述は控えておこうと考えている次第。特にガンダム話の最後はオチであると同時にユニークな社会論評でもあると思うし、難しいところだよなあ。
今回はだいぶ前のほうの席に座れた。空気感的には、前でも後ろでもあまり変わらない濃度だ(笑)
マクラ 理屈ポエム「理屈民族に生まれて」
ポエムというか、なんだろうと思ったけど、表現形式としてなんなのかと言われたらポエムですというしかないねこれは(笑)理屈民族に生まれたある種の哀愁を叫ぶポエム。
「縄文時代からの人口の移り変わり」から「生まれ変わり」「オーラの泉」へのツッコミは笑った(笑)ツカミはばっちりとOKという感じ。
さよならET
USJのアトラクション、ETアドベンチャーが終わるということでETの話。
ETがやってきた宇宙船からETの星の産業レベルを理屈立てて想像し、「ETの星はあんな植物ばっかりの惑星じゃない!」というツッコミ。飲み屋でクダ巻いて、風俗に繰り出すETや、○○○やってるETもいるに違いない、という想像(笑)同時にスピルバーグ監督の撮影方法というものも知って、なんだかトクした気分に。
こういう理屈ツッコミは、我々も自分の得意分野(SFであるとか、時代劇であるとか)ならやると思うよー、という岡田コメント。なるほどなるほど。
10万円のロケット花火
話は愛国戦隊大日本の時代までさかのぼり、撮影に使った火薬の話からスタート。花火を解体した少年時代の思い出と、撮影に使う火薬の工作が一致した瞬間「火薬は圧縮しないと爆発しないんだ!」そして庵野ウルトラセブンのときの、火薬爆発エピソードへ。
そうやって「火薬使ったら俺たちはナンバーワンだぜ」という意識があったが、板野一郎がバイクに乗りながらロケット花火を打つ映像を撮ったということを知って対抗意識がメラメラと燃えた。がイナックスの社員旅行で「10万円分のロケット花火をやるぞ!」ということに。では10万円分のロケット花火、どうやって打つ? 理屈で考えよう。
花火は花火問屋で安く買った。10万円で1万発買えた。季節外れの花火は安く買える。次に準備。試行錯誤の実験を色々やって、1,8メートル四方のネットを二重に使い、その網の目にロケット花火をセット。ネット1セットで3600発のロケット花火の打ち上げが出来るという計算。3セットのネットを用意。そして着火には広範囲に火花が飛び散る「ドラゴン」を使うことに。実験も成功し、いざ本番へ。何分量が多いので、昼にバーベキューをして、夕方から準備をしはじめないと間に合わない。
頑張ってセットをして、準備は万端。夕凪の頃合いを見計らって一斉点火! ……という展開。
いやー、これは面白い話だった。最後にコストパフォーマンスの話として、ロケット打ち上げ4000億円、でも10万円のロケット花火でそれの何分の一かの興奮を味わえるんだぜ!? 超お得じゃない!? という金の話がちょっとハマった。「岡田斗司夫のゼニの話」は小銭から大銭まで、本当に面白いなあ。かかったコストが非常に現実的かつ具体的なのがいいんだな。
ガンダムとはなんだったのか?
考えるきっかけは勝間和代の新刊の帯。皆さんもインターネットで自分のモビルスーツを手に入れてください、というもの。これに違和感! そもそもガンダムは、アムロがガンダムを不要とする(卒業する)物語なのだ! という論。
冨野監督のファーストガンダムについての長い考察。プロットはシンプルで昔ながらのものなのに、ディティールの表現が凄い。
悪いジオンがきた!
父の作ったガンダムで戦え!
ジオンやっつけた! 平和万歳!
こういう昔ながらのロボットアニメを、細かい細かい演出やシナリオ構成で物凄い人間ドラマにしたのが冨野監督。ガンダムをただの一兵器として扱うこと、戦争ゆえに双方に理があることが画期的。
ちなみにエヴァも
なんだけど、どうも最後が弱いんじゃないか、と(笑)
シャアについて
テレビ版では己の因果を絶つべく、最後にキシリアもろとも死んだシャア。あれでこそシャアという人間は完結すべきであったのに、その後の劇場版以降では、シャアは逃げ延びて生きてしまっている。冨野監督の気持ちは十分わかるが、それはだめじゃあ〜! という岡田コメント。
坊やだからさ、等一連のシャアのセリフというのは、実は自分自身をも捉えているしているものになっている。ガルマを見殺しにして、葬式演説なんかを無視して完全に割り切れるほどにはニヒルではないし、ララァとアムロがわかり合えたとき、嫉妬心を見せて割り込み、実質的に自らララァを死に追いやっている。シャアはなんだかんだいっても20歳くらいの悩める若者にすぎない。だからこそ最後の最後、キシリアを殺し、自らも死ぬことでシャアの人生は終わるのだ。なのに劇場版では(ループ)
アムロの成長、ガンダムからの卒業
モビルスーツという祝福と呪いの装置からの卒業、これがガンダムなのだ。
祝福とはガンダムに乗ることで人々から喜ばれること、認められること、呪いとはガンダムしか取り柄がない存在になってしまうこと、周囲からの嫉妬、相手を殺してしまう業。
アムロを理解する人々はホワイトベース以外ではララァやランバ・ラル、ハモンなど実はジオンの面々ばかり。父は酸素欠乏症で死に、母の愛情も失ってしまったアムロ。しかも心情的にはジオンに共感するところが大きい面がある。終盤ジオンが劣勢になると、もはやアムロは出撃しなくても戦争には勝てそうなのだが、アムロはあえて出撃する。そして学徒動員で戦争に来ているジオンのパイロットを撃ち落としていく。戦争で相手を殺すことしか自分の存在意義がないことに絶望するアムロ。
おしてア・バオア・クーが陥落する最後、アムロは……という展開。
これも面白かった。かなり目から鱗の読み解きでした。最終話の考察は正直言って驚嘆した。最終話の倍以上の時間を使って最終話を語るこの熱さよ! 冨野監督の演出力というのも凄まじい。
続編の話
ZもZZも冨野監督の物凄い苦しみが見える。
Zは「じゃない」の連続。俺は女じゃない! というカミーユ、私はシャアではない、というクワトロ。否定の連続で最後は主人公の精神が病んで頭が狂うという終わり方。
ZZは秋元康に作詞を依頼。出てきた曲が「アニメじゃない」。
売れるためとはいえ秋元康に書かせた冨野監督の苦悩や如何。
不遇すぎて冨野監督は、世界一才能があるのに世界一ひねくれてしまった(笑)
そして、理屈民族にとってのガンダムとは?
ここは結論が一つの社会考察エンターテイメントになっていると思うので一応カットしようかな。出てきた比較対象の写真で笑ったわ。いや、ガンダムはもはやそうなってるんだなあ、と。
まとめ(?)感想
Gyaoジョッキーの頃から岡田斗司夫の話し上手っぷりはほんとに凄いなーと思ってて、今回は花火話、ガンダム話でそれが大爆発した印象。彼は「凄い」という意味の内容を、とことん具体的に微分して喋るんだな。ちょこっと延長して9時半までたっぷりやってくれたのも嬉しかったです。
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「岡田斗司夫の ひとり夜話2」その1 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな
http://d.hatena.ne.jp/macgyer/20091031/1256957186
「岡田斗司夫の ひとり夜話2」その2 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな
http://d.hatena.ne.jp/macgyer/20091102/1257173965
フカダ君の話はそれまでの伏線が一気に回収されて、話芸として凄いしムチャクチャ面白かったですね。
ロジカルエンターテイメント、実に面白い。填らない人、反理屈民族の人には「屁理屈おじさん」なのかもしれんけども(笑)、填る人にはたまらない「なるほどおじさん」っぷりだ。助けての岡田から「なるほどの岡田」ですよ!
分析+考察+ツッコミの視点で見えてくる、意外な結論。彼の著作は昔からこういう思考の流れなんだけども、「世界征服」は可能か? あたりではほんと明確になっている。
「世界征服」は可能か? 岡田斗司夫 - 地球にマンガがある限り!
http://d.hatena.ne.jp/Fujiko/20071001/p1
僕はこの本のレビューでも、「意外だけどよく考えると案外そうかもしれんという結論」の話をしてて、やっぱりそうなんだなーと思った。
「世界征服」は可能か? (ちくまプリマー新書) | |
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