映画ドラえもん のび太の創世日記 [DVD]
映画ドラえもん のび太の創世日記 [DVD] | |
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藤子F不二雄が火の鳥に挑戦した意欲作。F先生に全盛期の体力があれば、もっともっと凄いものになっていたのではないかという思いを抱かせるぞ! それでもストーリーとして破綻せず、きちんとコンパクトに劇場用作品としてまとまっているのはさすがトキワ荘の大ベテラン漫画家。
夏休みの自由研究に煮詰まったのび太は、ドラえもんからもらった「神様セット」で地球を作ろうとする。神様セットで作られる地球の歴史を見つめるドラえもんたち、そして未来からタイムマシンでやってきた生物との接触……。
本作では、ドラえもん、のび太たちはほぼ完全に傍観者のスタンスをとる。まさに「神様の視点」。マンガの中で世界を作る、ある種のメタファーを形成している。全ての歴史を見つめるドラえもんたちの立ち位置には、F先生による「火の鳥」が見え隠れするんだよなあ。大昔の神話の時代からおとぎ話を絡めて進む物語は娯楽作品としての見せ場も多く楽しめる。ラストの決着の付け方は急ぎ足で明確な倒すべき「敵」が存在しない分、カタルシスはあまりないのが残念なんだけど、本作品についてはそこは見所じゃないんじゃないか、と思っております。新しい未来を作るために進む意志という、敵を倒す事それ自体よりも、もっと大きいものをガチっと形作った物語。野美秀の「交渉なら僕にまかせてくれ」と自ら対立相手との交渉を買って出たハートの強さ、あのシーンのかっこいいこと!
F先生が強く関わったという事実については、この作品がただの「原作」ではなく「原作」「制作総指揮」と「脚本」いうクレジットになっていることからわかります。制作総指揮というのがどれくらい作品に関与するものなのかは、去年公開されたONE PIECEの映画における尾田栄一郎の疲労度合いを見れば想像しうるものですね。
大傑作に惜しくもなれなかった良作、だと思います。B+