私は嘘が嫌いだ 糸井重里

糸井重里による本当みたいな嘘みたいな話(エッセイ)。24話収録されており、アホみたいな話、おかしな話などがたくさんある。なんちゅーか「はぐらかし」の技術が異様に凄いというか。冗談の名人によるホラ話のような感覚で翻弄されます。全部で260ページくらいなので軽く読めるし電車内暇つぶし本のような用途に最適かも。美食家(珍味食家)がその食の追及のために、マンボウをいじめる話があって、マンボウをいじめるという概念がなかなか斬新で印象深かった。B

ゲーム大国ニッポン神々の興亡―2兆円市場の未来を拓いた男たち 滝田誠一郎

プロジェクトXのような企業成功ストーリーや、戦国時代・三国志のような乱世英傑伝が好きな人にはたまらない本だと思います。日本におけるテレビゲームの発展、成功の礎を築いた男たちの物語です。物語というか取材とインタビューによるドキュメントといったところでしょうか。
まず「ファミコン以前」の歴史があります。多くの人はインベーダーゲームを想起されるのではないかと思いますが、インベーダーゲーム以前にもビデオゲームがあって、それらについても色々と書かれてあります。そしてドンキーコングファミコンスーパーマリオという任天堂時代の話。神こと宮本茂も何度か登場します。そしてファミコン全盛期を築くことになる堀井雄二ドラゴンクエスト坂口博信ファイナルファンタジーについてのエピソードもふんだんに載っていて「あの頃」の小学生だった僕にはたまらない。
さらに「打倒任天堂」時代とでも言いましょうか、セガやハドソンのゲーム機の話も出てきます。PCエンジンは、ゲーム機としての機能はファミコンより上だったにもかかわらず、ファミコンを倒すことはできなかった。
そして時代は大きく展開する。ソニーによるCDROMを使うゲーム機「プレイステーション」が開発される。当初は社内でも否定的だったこのゲーム機だが、ゲーム業界はまさに乱世となる。ソニーにつくか、任天堂につくか。ここでも、プレイステーション成功のカギを握ったのは人気コンテンツ(ソフト)の存在だった。「ドラゴンクエストプレイステーションに」というニュース。ジャンプでその記事を僕はリアルタイムで読んでいた覚えがある。その後のプレステの大成功は、現在のプレステ2PSPを見ても明らかである。
しかし、プレイステーションも決して問題なく天下を支配していたわけではない。プレステに反旗を翻したゲームクリエイターもいた。その男、飯野賢次。異彩を放つゲームクリエイターだった。
この本は2000年の6月に発売された本である。まだX-BOXはその開発、販売が発表された頃だったので、その後の話は乗っていない。しかし、日本におけるゲームをめぐる物語は、ここまで多岐的で広大なものだったのかと非常に面白く読めた。A−

ドラえもんの新声優決まる

ドラえもんの新声優陣
水田わさびドラえもん
大原めぐみのび太
関智一スネ夫
かかずゆみ=しずか
木村昴ジャイアン

ジャイアンの人が14歳(中学生!)ってことで下手したら今後50年くらいジャイアンの座を守るわけですかね。いやはやなるほどというかホーというかフウンというかヘエというか、そんなスタッフになりました。

水田わさび(30)に決定。女性ながら男の子のような、ちょっとつぶれた感じの声の持ち主で「(抜てきされて)号泣してしまった。かわいらしさをモットーに頑張って演じたい」。

文末の「。」が違和感ありますけどまあ引用です。待ってくれえー。ドラえもんのモットーはかわいらしさじゃないだろぁー! 強いて言えばかわいらしさはドラミとかミニドラ的要素なのであって、ドラえもんは必ずしもかわいくない。誤解があると良くないので細かく書くと、この場合、かわいい=良い、かわいくない=悪いという価値観では全くない。確かにドラえもんという物体を造形的に見てみると、二頭身だし全体に丸みを帯びているしネコ型だしよくニコニコしているし、そういう点がアンパンマンピカチュウ的なかわいさを持っているという点は首肯できる。つまりビジュアル上の問題では、一定のかわいさはある。

しかし、声という内面の発露である観点から見て、「ドラえもんは性格がかわいい」のかというと、必ずしもそんなことはないと思う。欲深だしわりと諦め早いしが嫉妬深いしライトにスケベだし。もちろんそういう点がかわいいと言う、いわばメタ的なかわいさをもって上記発言があるならわからないでもないが、犬猫ハムスターみたいな天然一義的なかわいさではないと思うんだよなあ。のび太だって「ドラえもんがかわいいから」一緒にいるわけじゃないでしょ。「かわいいから愛でる」というのはフラットな関係ではなく、一方的な印象がある。7巻以降、のび太にとってドラえもんは、自分のさえない未来を変えるためにやってきたお助けロボという役割がメインの存在から、かけがえのない親友になっているのである。かわいいだけの存在ではなく、自分の部屋の押し入れにドラえもんがいない(いてほしかった)僕たちのかけがえのない友達たるドラえもんを演じて欲しい。新声優陣の成功を、心から祈る次第である。