新選組!

第38回「ある隊士の切腹」です。河合耆三郎大倉孝二)の切腹に至る流れが、本人の回想によって構成されており、話としてとてもわかりやすかった。河合の切腹は今読んでいる司馬遼太郎の「新選組血風録」にも書かれているエピソードで、谷三十郎(まいど豊)による介錯の失敗、その後の斎藤一オダギリジョー)との絡みも描かれていて個人的に良かった。
あと、冒頭オープニングまでで寺田屋騒動が全部ぶち込まれててすごい密度だと思った。滝本捨助中村獅童)の狂言回し的役割がガッチリはまっていて、いいキャラ作ったなあという感想。坂本龍馬江口洋介)とおりょう麻生久美子)のチームワークも見事ですなあ。おりょうの入浴シーンは往年のお銀(水戸黄門)を彷彿とさせるほどだったと思う。まあお銀よりもすげー若いけども。坂本らを間接的に助けていたお登勢戸田恵子)もこれかなりいい女だよね。いいわー。
さてそんな濃度のオープニング前だったんだけど、本編も濃度が高い。ボタンの掛け違いによってあれよあれよと事が進んでいって、最終的に不幸になってしまう。よくありそうな展開だけどそれだけに各々の人物の行動の必然性が説得力あるものでなければならないところ、実に良く出来ていたと言えると思う。武田観柳斎八嶋智人)という人物の矮小性もいよいよ際立ってきて(さっさと本返して50両取り戻せばいいのに)、河合に「(武田は)隊士には嫌われている」という言葉を吐かせ、武田の死亡フラグも立った。武田は新選組のために洋式兵学の本が必要という主張をしているが、だったら新選組のメンバーなら誰がその本を得てもいいのではなかったのか。そのあたりの「融通の利かなさ」「我の殺せなさ」が土方歳三山本耕史)にとってもさらにイラつくところであったように思う。まあ武田も彼なりに、古い軍学だけでなく新しい知識も必死で得ようとしていたというのはわかるけどね。
そんな中、井上源三郎小林隆)はどの回でもいい役回りなんだけど、今回もいい役だった。こんな先生が学校にいたらいいんじゃないかとどうでもいいことも考えてしまった。どうでもいいついでに書いておくと、河合役の大倉さんは、映画「ピンポン」でアクマ役をやってたんだよね。どっかで見たことある顔だなあと思ってたらそうそうピンポンですよ。存在感のある役だったので印象深かった。
河合に同情しない沖田総司藤原竜也)は顔面の蒼白さがいよいよ増してきて、己の生命の残りを自覚しつつあった。自分の命を粗末にする人間に同情できない、と言った彼の心中は、察してあまりあるものである。あの顔色の悪さはどういうメイクでやってるのかなーと少し好奇心で気になった。まさに蒼白だ。
それと、斎藤一人間性への目覚めというのは皆書いてるけどやっぱり特筆に価すべきものだよな。介錯を断ったり、自分が介錯した者の悪夢でうなされたりしている。彼の中で「人を斬る」事は、「仲間を斬る」ものではなくなってきたんだなー。油小路の変に至るプロセスももまた非常に楽しみである。なんてったって斎藤は伊東甲子太郎谷原章介)グループにスパイとして乗り込むわけだからなあ。「かつての仲間」という概念に対する彼の心はどのように変化するのか楽しみだ。
あと、藤堂平助中村勘太郎)と河合はすげー仲が良かったんだね。初期の頃は顔がかぶってたので区別つきにくかったです。すいません。原田左之助山本太郎)の最後に見せた涙、永倉新八山口智充)の切腹させまいという必死の気持ち。彼ら2人と土方との溝も徐々に深まっていってしまってるんだろうなあ。 山南敬助堺雅人)を切腹させたことによって例外を認めないとした土方の言い分はそれはそれで筋は通っているのが、よりいっそう溝を深くさせている。
相変わらず地味だった近藤勇香取慎吾)は、皆から「近藤さんさえいてくれたら」と言われてた。まあなー彼が広島にいかなかったら死ななかったかもしれないしなー。「if」をいってもしょうがないけども、因果関係で言えばやっぱ死なずにすんだ気がする。
追記 このようなシリアスモードの回でも所々にギャグパートが入っているのも三谷脚本ならではなのか、今回は原田がかき集めたお金をバクチで全部スる、というお約束すかんぴん(文字通りふんどしだけ)ギャグが入ってた。原田はわかるとしても、藤堂、斎藤がふんどし一丁というのも妙におかしかったなー。