新選組!
第41回「観柳斎、転落」の回。武田観柳斎(八嶋智人)がいかに死ぬかというところが見所であった。「いかに」というのはそのプロセスである。この大河ドラマ「新選組!」では、新選組内部では憎らしく生きて死ぬ人は皆無だ。みんな理由があって、それぞれの義があって、やむなく死んでいく者が多い。河合耆三郎(大倉孝二)のような、ある種の不条理感が漂いまくる死は、わりと珍しい部類に入るんじゃないかと思う。
さて武田さんですが、この人もこの人なりの「義」や「新選組のため」に死んだという演出になっているようだ。隊士に斬られて死んでしまうのは「憎らしくて」の部類に入れようと思えば入れられるが、少なくともトップの近藤勇(香取慎吾)は武田さんを大いに買っていたわけだ。まあ近藤さんは隊士の誰も嫌ってはいないわけで、そのあたりの地位の構築というのはすごいと思う。
一方、土方歳三(山本耕史)と沖田総司(藤原竜也)は切腹だぁ&斬っちゃえ派だ。土方さんは新選組という組織の確立のために、規律遵守のために切腹させる人だけど、最近の沖田さんは「生きることに誠実になっていない人間」が憎くて仕方がないのだろう。だからそういう人は死んでしまえと思い、斬りましょう斬りましょうと言う。
作中では、武田さんの新選組内での地位の転落が実にうまく描かれていて相変わらず三谷脚本は魅せるなあと思った。伊東甲子太郎(谷原章介)と御陵衛士加入関係の交渉して大失敗&頼ってきた隊士を切腹させてしまったことで、平隊士はおろか幹部内でも孤立。ひいい。幕府からの出世の知らせに関しても、その扱いに関して原田左之助(山本太郎)はともかく、永倉新八(山口智充)までもが武田さんへの不満を漏らすとは思わなかった。ということは、いい漢「永倉」までもが文句を言う。「それぐらい」嫌われていたわけであり、先週皆からの愛されっぷりをこの上なく発揮していた藤堂平助(中村勘太郎)とはえらい違いである。
その他観てて思ったことなど。
・冒頭の近藤さんと土方さんの抱擁シーンはナイスだなあ。人が来て「ガバ!」と離れるところなんかはお約束的行動で笑えた。んでまた抱擁してんのね。呼び方も「トシ!」「かっちゃん!」でいい感じです。ガバ!
・斎藤一(オダギリジョー)は相変わらず何かを彫っている。まあ仏像もしくは仏像的なものだと思うんだけど、こういう作業は「魂の浄化」の象徴として用いられることが多いわけで、斎藤さんは函館までまだまだ戦うんだけどそのあたりどうなんだろう……と思った。
・山南敬助(堺雅人)今回も回想なし。まあなあ。しゃあねえなあ。
・井上源三郎(小林隆)と島田魁(照英)のやりとりがさりげなく良かった。島田さんの「出世しようとしない理由」も明らかにされたわけだし。なんか、島田さんのキャラクターイメージというよりも照英さんのキャラクターイメージに近いよね、こういうの。あと谷周平さんも地味に修行して頑張ってるっぽい。
・坂本龍馬(江口洋介)に忍び寄る死の影。佐々木只三郎(伊原剛志)と滝本捨助(中村獅童)の暗躍もあるんだろうなあ。この2人のコンビも面白いね。水戸黄門とうっかり八兵衛だよな。しかも出世願望とか野心ありまくりの八兵衛。わはは。西郷隆盛(宇梶剛士)も坂本抹殺宣言。怖い。
・監察の山崎蒸(桂吉弥)の有能ぶりはただごとではないよね。必殺じゃないけど素晴らしい仕事人だ。
・お考(優香)の性格は姉と 正反対ってやつですか。わかりやすいなあ。これからどうなるんだ。これからといってもあと数回だが……。