泥鰌庵閑話 (上)(下) 滝田ゆう

泥鰌庵閑話 (上) (ちくま文庫)
泥鰌庵閑話 (下) (ちくま文庫)
どじょうあんつれづれ話と読みます。これは上の少年時代の自伝的物語とは違い、作者の「現在」的なものがふんだんに現れている作品。物書きになった主人公はサングラスをかけ、毎日飲み歩く生活をしている。サングラスは作者もしており、髪型も同じでこの主人公は作者がモデルであることをわかりやすく暗示している(暗示というほど大げさなものでもない気もする)。

自堕落な飲み方、グダグダな飲み方、缶詰状態になっても飲む、たまの家族サービス、行きつけの店、などなど、「酒と自分と生活と家族」というものが数多くの短編を通じて描かれている。こちらは上記の寺島町奇譚の世界の雰囲気とはかなり異なっていて、けっこうあっけらかんとしている。読んでると妙にむずむずしてきて、酒を飲みたくなる作品。滝田ゆうの漫画表現はけっこう独特なものがあり、フキダシの中に心象を花や電球やなんやかんやの「物」にあらわした表現の仕方をしている。これどういう意味なんだろう、というのもたくさんあり、自分なりにあれこれと想像するのが楽しい読み方なのかもしれない。B+