関ヶ原 全巻 司馬遼太郎

関ケ原(上) (新潮文庫)

関ケ原(上) (新潮文庫)

関ケ原(中) (新潮文庫)

関ケ原(中) (新潮文庫)

関ケ原(下) (新潮文庫)

関ケ原(下) (新潮文庫)

長い。なーがい。文庫だと全部で1500ページ以上あったんじゃないだろうか。まあそりゃ世の中にはもっと長い本もあるので上を見てもきりがないけど、僕の人生上ではこれはけっこう長めなのである。というわけで、関ヶ原。タイトル通り、関ヶ原の合戦の物語である。年月で言うと太閤豊臣秀吉の晩年くらいから、関が原の合戦後まもなくくらいまでの時間の中の物語である。石田三成徳川家康、2人の英傑の権謀術数がこれでもかこれでもかというほど細かくかつ面白く描かれていて、関ヶ原の合戦は合戦の1日だけではなく、そのずっと前から戦略、武略、戦術が繰り広げられていたのだなあと感嘆する。裏切りの男、小早川秀秋についても、その人となりが非常に細かく描かれていて、戦国大名の性格というのがよくわかった。
そして三成の石高の少なさゆえの苦労は読んでいて非常にやるせなかった。20万石程度の大名が、250万石の大名たる徳川家康を大向こうに回して、頭脳を駆使して挑む姿は悲壮でもある。「豊臣の恩」という観念で動く三成と、「利と害」という現実で動く家康。2人のこの違いは、人を引き付ける魅力の差異にも現れた。
三成と家康が主人公のようなものなので、2人の描写は当然多いのだけど、その他の家来、大名もダイナミックに数多く描かれていて素晴らしいです。特に黒田如水、島津家、島左近加藤清正福島正則直江兼続あたりは分量を割いて描かれていたように思う。後半から終盤にかけて、長い期間の連載だったためか、同じような描写が何度も出てくるのにはちょっと飽きてきた(例としては、黒田如水が秀吉の次に天下を取る男であると秀吉が言った、というエピソードなど5回くらい出てきた)けど、最後まで楽しく読めた。A−