茶の味 DVD

茶の味 グッドテイスト・エディション [DVD]

茶の味 グッドテイスト・エディション [DVD]

監督は石井克人
ほっこりと、面白い。マッタリ観るのに最適な1本だった。田舎に住む「春野家」の人々の、ちょっとした悩みと穏やかな日々を描いた作品。悩み、といっても家庭崩壊するようなキツイものではなく、それぞれが抱く、個人的な悩みである。長男ハジメ佐藤貴広)は転校生アオイ(土屋アンナ←後に「下妻物語」で大ブレイク)に恋をする。ハジメの妹幸子(坂野真弥)は、何かの拍子に巨大な自分が出現する(心の自意識の象徴だろうか?)のに困っている。母親の美子(手塚理美)は、アニメの動画の仕事をしていたのか、現場に復帰するためにコツコツと作品を造っている。父親のノブオ(三浦友和)は催眠療法カウンセラーのような仕事をしている。祖父(オジイ)のアキラ(我修院達也)はユニークな言動で家族と接している。ミキサーをやってるオジのアヤノ(浅野忠信)は、結婚したかつての恋人にうまく接することができず、悶々としている。そんな彼らの日々を描いた143分である。
それぞれのキャラクターがとてもイキイキしているので、物語の輪郭は比較的くっきりしているように思う。まあ一番濃いのは「何に出ても我修院」という気がする我修院達也だなあ。孫娘に向かって突然「な、ん、で、あなたは三角定規なのお〜♪」と歌いはじめるシーンは噴き出した。家族6人全員にそれぞれ分量を割いて描いているので、厳密に測ったわけではないが一人あたり主人公レベルで描かれる分量は20分ちょっと、という感じだろうか。純朴なハジメの淡い恋や、飄々としながらも色々と思うことを抱えて生きているアヤノなど、素朴に心地良い物語がある。
春野一家だけではなく、母親の美子の弟の漫画家もかなり面白い人として出てきており、アシスタントが浮気していることを電話で家の旦那に知らせたり、そしてそれがアシスタントにバレてボコボコにされたり、オジイのアキラと一緒にCDデビューしたりとかなりオモロい行動をしている。特にCDデビューのくだりは我衆院達也と一緒に踊りも踊っていて最高。曲名は「山よ」。この曲のインパクトの凄さについてはほんと実際に観た方がいいです絶対、と思った。プロデューサー役で出てきた武田真治の「ミリオンいくかもしれない……」の一言もツボだった。あと庵野秀明草なぎ剛ががサラっとゲスト出演しているのも面白かった。「アニメは描いてナンボですよー!」と言ったが、これは庵野監督の信条でもあるのだろうか……?
終盤、幸子が逆上がりに成功したあたりがクライマックスになるのだと思うのだが、そこからの映像が「なんじゃーこりゃー!」というスケールのものだったので、これも必見かもしれません。そして、オジイの残したものにもかなりホロリとやられる。母の美子がアニメーター復帰のために動画を描いていたのが見事な伏線となり、感動する。
日本の田舎的な風景が非常に美しく、なかなか良き邦画だなあと思った。B+