マッドメン 諸星大二郎
- 作者: 諸星大二郎
- 出版社/メーカー: 創美社
- 発売日: 2000/10/04
- メディア: コミック
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マッドメン―完全版 (ちくま文庫)
いやあーなんとも凄い作品だった。諸星大二郎作品をちゃんと読んだのは、これがはじめてだ。ニューギニアの山奥に住むコドワと、日本に住むナミコ。2人は腹違いの兄妹の関係だった。そして物語はニューギニアに伝わる神話の世界にどんどん進んでいく……という展開。その神話の鍵を握る「仮面の男」と泥の仮面を被った精霊「マッドメン」。謎解きの楽しさと、神話の世界に入り込むドキドキ感が大きなスケールで味わえる。ドラえもんで言うと、「大魔境」と「創世日記」を合わせて神話の世界に入り込む感じかな。
このマンガに出てくる神話はどういう神話かというと、いわゆる「国産み」の物語である。日本ではイザナミ・イザナギの伝説として知られている系統のものである。舞台がニューギニアの奥地という「秘境」的な位置付けなのでその神秘性、民族性を独特の画風で描ききっている。絵には定評のある諸星氏だが、この作品での彼の絵の迫力は存分に発揮されているように思う。1985年の作品で、いわゆる現代風の絵ではないけれども、このマンガはこの絵がまさにぴったりで、このストーリーにこの絵以外はないという感じだ。なんというか、我々がアフリカ奥地の民族の風習や衣装を想像するときのああいう独特の衣装、風俗をニューギニアではどうか、という視点で描いている印象。特に古代から伝わるという「仮面」については極めて細かい模様で多くの描きこみがあり、非常に迫力がある。
終盤、「人類とはなんなのか」という問いかけとともに物語は閉じてゆく。伝説や謎が多かったコドワのいた村も石油の産出により近代化し、生活様式は大きく変わる。安易な自然賛歌、文明批判では全くなく、ただただ大いなる神話と、そこに巻き込まれた人々を描いている作品。迫力があって引き込まれる展開で、とても面白かった。A-