おともだち 高野文子

おともだち

おともだち

なんというか、抒情詩的なマンガだった。僕は高野文子作品は、感情レベルでズーンときて納得いくというかわかるものは確かにあるんだけど、全部が全部そうだというわけではなくて、感情レベルではちょっとわかりにくくて、理性で「ああ、これはこういうことなんだな、こういう作品なんだな」と理解する作品もある。以前読んだ『棒がいっぽん』はどちらかというと感情レベルで「わかった」んだけど、この『おともだち』は理性と感情半々で読んだ。大正時代のある少女の身の回りに起こった出来事を描いた『春ノ波止場デウマレタ鳥ハ』は非常に詩的でロマンが溢れていて、悲しさと切なさとはかなさと喜びがじんわりと描かれていて、なかなかお気に入りの作品。高野文子は、題材の選び方と、その表現の仕方が本当に独特だ。一般的なマンガの文法に慣れていると、読むのにけっこう戸惑うかもしれない。いい悪いは別として(まあしかも悪いってことは無いと思うんだけど)、女性作家としては特異な立ち位置にいる人なのかもなあと思った。比較するとアレだけど、ちょっと吉田秋生の『櫻の園』のようなイメージの作品ですなあ。B+