海洋堂クロニクル あさのまさひこ

力作にして未来に残されるべき一冊。海洋堂という企業があったことは(まだ当然現存しているが)、日本の造形文化史に残るべきことだろう。まず気になったというか読みづらかったのは、文字の背景に写真が使われているページが非常に多いことだ。メガネをかけている近眼の自分にとっては、この種の構成というかデザインはかなり読みづらく、目にしんどいデザインだった。将来文庫版になることがあれば、この読みづらさはかなり解消されるだろうと思う。一般的に言って、「写真を背景にした活字表示」というのが優れたデザインなのかどうかはちょっとわからないけど、とにかく終始読みにくいなあと思ったことは確かである(字も小さいし)。黄緑色の文字とかホントに読みにくい。まあ、数多くの内容を詰め込もうとした結果であろうということで、あんまりそこは別にマイナス評価はしたくないところであります。
しかし、それ以外は、つまり内容は、もうもんのすごく、本当にものすごく、濃く充実していた。館長のロングインタビューも面白かったし、ワんフェスの歴史を綴った章は、それだけで一つの大きな物語性を有していて感動すら覚えた。当事者であった宮脇専務と岡田斗司夫氏の対談も、裏話的に非常に面白かった。銭金の話以前に、ガレージキットを愛した人の熱い想いが伝わってきた。造形というものに対する尋常ならざるこだわりと愛情(というのももはや陳腐な言い方かもしれない)
そして、北斗の拳エヴァンゲリオンのアクションフィギュアの歴史もただただ「へえ〜」と感心するのみであった。物の見せ方ということに対するコロンブスの卵的展開。僕はフィギュアカルチャーやプラモ史には詳しくは無いが、一つの大きな物語として、圧倒された。そしてフルタと海洋堂の決別となった、チョコエッグ騒動の顛末も詳細が載っていたので興味深かった。本の立ち位置からし海洋堂寄りではあるが、客観的に見ても海洋堂に非はほとんどないなと思った。
濃い力作。A

参考
地球にマンガがある限り! - オタク座談会書籍感想オタキングと宮脇専務との対談
地球にマンガがある限り! - 海洋堂海洋堂社長、宮脇修の著作