タイム・リープ―あしたはきのう 高畑京一郎

夜中の一気読み。こりゃ面白かった! 精神のみがタイムワープする「タイム・リープ」という現象。高校生の青春恋愛ものに絡めて素材を実にうまく裁いている。断片的な時間軸を、パズルのピースのように埋めていくことにより暴かれる主人公の女子高生がタイム・リープしてしまう謎。パートナーの若松くんは出来すぎていてかなり人間離れした印象を受けるが、まあこういう「ほぼ万能」なキャラクターによって、万能ではない主人公の行動が引き立つのではないかといえる(クライマックスも若松くんが持っていってしまっているよ!)。そう、この物語はタイム・リープしても別に私利私欲が充足させられる、ということがないのだ。半ばイヤイヤながらにタイム・リープしている感すらある。月曜日から水曜日、水曜日から金曜日へと飛ぶ主人公。どの時間帯に何をしたかは作中で若松くんがまとめてくれているので、読者である我々は別にノートまでとる必要もなく楽しめる。終盤、伏線が次々に回収されてパズルのピースがはまっていく様は爽快の一言。ちょっとネタバレになってしまいますけども、原因についてああいう形での「恐怖感」しか使うことができなかったのかというのはちょっと疑問に思うところ。結果的に主人公は無事だったけれど、そのバックグラウンドには犠牲者がいるわけで、そこのところで後味がちょっと悪いなと思った。主人公だけに降りかかる個人的な災厄であればすっきりしたんだけどなあ。A-
バタフライ・エフェクトのび太の魔界大冒険などが好きな人にオススメ。

こちら文庫版の下巻。