電波男 本田透

電波男

電波男

内容(「BOOK」データベースより)
もはや現実の女に用はない。真実の愛を求め、俺たちは二次元に旅立った。モテない男達から圧倒的な支持を集めるWebサイト『しろはた』主宰が遂に動いた!キモメン・ニート彼女いない歴=年齢の妄想電波系オタクが激白する、俺たち(=キモオタ)に残された最後にして最高の純愛とは。

話題になった本を随分経ってから読むコーナー。いや、そんなコーナーないし。
というわけで『電波男』です。インパクトのある本だったわあこれは。三次元よさらば、こんにちは二次元! 萌えこそが純粋の愛! という思想の元、これを万人に啓蒙せんと欲す! という内容で、非常に衝撃的だった。電車男を大批判し、「エルメスカップを叩き割れ!!」とイラスト入りで主張する文章には笑わせられた。比喩表現もユニークで、勢いよく読めます。
で、その萌え=純愛こそ人類平和の境地! という解釈について。うーむ、世の中の大まかな流れについて、「負け犬」議論と対比させることにより、まあそういう解釈は成り立つわなーというのは分かった。なるほどね。オタクよりDQNがモテるという構造を解き明かす持論も面白かった。ううむ。
そして最終的に二次元の愛を啓蒙するのだけど、僕は純度というか濃度の高いオタクでもなく、車にハイビスカスのシールを貼るドンキホーテ大好きっ子でもないので、立ち位置として非常に迷う。おおーきく、ほんとに大きなカテゴライズでいえばオタクなのかもしれんが、フィギュアの1体も持っていない僕がこの本に出てくるような例としてのオタクであると言えるかというとちょっと難しいと自覚する。
しかしまあ10年後もしくはそれ以上の未来において、デジタル技術が作り出すバーチャルリアリティの世界はどうなっているのかという点はかなり興味深いところ。擬似三次元で『ルサンチマン』の世界が実現するのか。これが実現したらもうホント世の中の流れは一気に二次元(正確には仮想3Dか)萌え社会になるんじゃないかしら。そしてそれは男性だけでなく、女性にも言えることであろう。好きなように生きていくのだ。多分少子化が進むなあ。
筆者がモテないのは何故か!? というところで、「本人の性格」って考慮されているのだろうか、というところが終盤かなり気になってしまった。うーん。細かい点で議論の矛盾点もあるしなあ。エロゲー買うのとホスト通いって本質的にそこまで違うものなのか? とか。
で、ここまで書いて気がついたけど、これは思想エンターテイメントなんだな! という感覚で抑えればかなり納得がいくし面白く読めるのではないか。一種の思考実験とか、モノの考え方の一つの観点というか。読んだ後に実生活に活かせそうな行為があんまり無いのは、僕の日常生活がこの思想を必要としていないから、なんだろうなあ。
ただ、なんというか、自由洗脳競争社会の今日において、オタク勢力による酒井順子支持層との思想対立における巻き返し、みたいなニュアンスはあるかも。自分のルサンチマンと現実をごっちゃにしちゃいけないというところが読む上での注意点だろうかしらん。全くオタクじゃない人(男女問わず)の感想を聞きたいところです。B

モテない30代男が到達した「俺にはもうバーチャルしかないんだ!」という達観。仮想3Dワールドで美少女に恋する主人公。これはバーチャルのセカイ系だと僕は思う。かなりの良作です。