新ゴーマニズム宣言SPECIAL 沖縄論 小林よしのり

ブックオフ安売りで300円で売ってたので思わず購入。凄い表紙だな。総括としては、沖縄を論じた、いわゆる「沖縄本」としては良書なのではないだろうかな。どんな思想もそれだけを信じると危険であるということは言うまでも無いことで、バイアスあるいはフィルターが強くかかっていそうな本は、疑いつつしっかり読むという姿勢が必要だ。
で、その前提で本書は、沖縄の自然と海、そして米軍基地、この裏表を主観交えつつ比較的相当しっかり描ききっていると思う。『戦争論』以降、よしりんは日本人のアイディンティティを探求する方向に筆が走っているような感があるが、本書もそんなニュアンスはあった。琉球の歴史を描き、琉球と世界との歴史の接点を描き、日本、中国、アメリカを描く。また、瀬長亀次郎のエピソードは物凄く熱くてマンガとしても面白かった。
現在の沖縄の状況、すなわち高い失業率と観光・基地による収入の暮らし。日々の生活という点において「君はいかに生きるのか?」ということを、なんら照れることなくど真ん中に問う作者の姿勢は好きだなあ。バイアス込みにしても自分なりに勉強して取材して構成して人と繋がって作品描いて発表してフィードバックするってのは、やっぱり姿勢としてエライと思う。特に現地の人の話を聞くというのはなんだかんだいって大事ですわな。証拠価値の高い資料(文献)と、フィールドワークとしての現地での情報収集。このバランスが大事だな。証言だけでは裏づけが無いしね。あーでも戦後占領しにきた米軍の性犯罪なんかは、もうちょっと裏づけ資料が欲しかったところ。あんまり無いのかね?
沖縄本の入門書としてもけっこうな濃度だと思うし、「やっぱ、るるぶだけじゃイカンかな」というような意識の人にはオススメかなというところ。議論のたたき台にもなりそう。これ読んだ上で次に進むなり反駁本読むなりというルートがあるしね。ううむ。こういうの読むと、左翼的価値観の人の沖縄知識ってどれくらいなのか気になるなあ。B