おおきく振りかぶって ひぐちアサ 1,2,3,4,5,6巻

高校野球甲子園も終了し、帰るところはマンガというホームグラウンドである。ワタシハコノマンガヲ、ゼロ年代野球マンガノ最高峰デアルト断定スル! と意味も無くヒョンヒョロ風味になってしまった。いかんいかん。

いやあ、これは本当に面白いです。何が好きかっつって、「努力の肯定」を力いっぱい描いているところが好きだ。

主人公は性格に問題アリの三橋廉、投手。マウンドに立つことは人から嫌われても絶対に譲らないという性格がナントモ気持ち悪くて凄い設定だなと最初に思った。で、この三橋が中学のとき、彼はヒイキされて(祖父が学校の創立者だったから)部活のエースをやっていたが、高校で阿部隆也というキャッチャーをはじめとする、新しい仲間たちと出会い、人間的にもピッチャーとしても成長していく……というのが大まかな路線。スピードは才能だがコントロールは努力だ、と仲間に言わしめるほどに、三橋のコントロールは物凄い(ストライクゾーンを九分割)。

で、1,2巻ではその出会いと、三橋の出身中学の連中がエスカレーターで進学した高校と試合をするんですな。その練習や試合を通じて、阿部が三橋の努力や気質を見出し、その努力を肯定し、認めるシーンが非常に多い。阿部はきつい性格だけど涙もろいところがあるのか、よく涙ぐむシーンがある。

で、まあ僕はそういう努力が認められるシーンとかにジーンとくる性格なので、1巻に数回涙ぐみつつ読むわけです。あー。3巻は阿部の昔の話(阿部がいかにして今の阿部に至ったか)が中心で、4巻以降は夏の大会(甲子園出場を賭けた予選)に繋がっていくわけなんですが、1,2巻がやっぱり一番オススメかなあ。三橋が自分の力(と阿部をはじめとするナインの力)で、ヒイキされて投手をやっていた、嫌われていた昔のチームメイトにも認められるに至るプロセス。ジワっときたりウグっときたりでなんかもうたまらん。

スポーツ心理学に突っ込んだ練習(描写)や、個性溢れるナインや監督の面々の群像劇もまた楽しい。日常描写がうまいマンガというのはたいてい面白いんだが(タッチとかめぞん一刻とかもそう)、この作品も高校生球児同士の会話もまた楽しいものであります。赤点回避のため三橋の家に集まった勉強会の際に、三橋の誕生日パーティーをやっちゃうエピソードとか、その後で三橋が自主練習のために作っていたマト(9分割の)を見て「甲子園いこうな!」とか言ってみたりああもうああもうたまらんですな。ああそうだそしてそのシーンが「夜」という点も指摘しておきたいところだ。夜という舞台で人は何を語るか。ちょっと昼では恥ずかしくて言えないようなことを言えちゃうのが夜だったりするよね。そういうことだ。

実際の野球との違いはフィクションだからもちろんある。マンガの場合、「リアルな野球らしさ」があれば僕はそれで良いと思う。そしてこの作品の場合、野球を通した人間ドラマが感動を呼ぶ部分が多々あるので、そこはちょっと考慮しておきたいところ。「野球マンガあ〜?」と興味の進まない人には、是非1,2巻だけでも読んでもらいたいなあと思います。傑作。A

セットでなく個別の場合はこちら。


参考
おおきく振りかぶって - Wikipedia

おおきく振りかぶって (Vol.4)

おおきく振りかぶって (Vol.4)

おおきく振りかぶって (Vol.5)

おおきく振りかぶって (Vol.5)

おおきく振りかぶって (Vol.6)

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