働きマン 3巻 安野モヨコ

働きマン 3 (3)

働きマン 3 (3)

アニメも絶賛放映中の働きマン、もう第3巻ですか。この時点でのアニメ化っていうのもすごいなと思うんですが、1クールできっちり終わらそうという趣旨なんでしょうか。よかよか。


・知らないところに来ちゃったマン
・働かないマン 前編後編
・ずぶ濡れマン
・いつか勝負をかけるぞマン
・こわもてマン
・帰ってきた働きマン
・オヤジマン

以上7エピソード収録。相変わらず熱いですなあ。僕は似た系列の作品『サプリ』と比べると、『サプリ』にはどうにもなんだか自意識過剰臭さというか、どうしてもカッコつけちゃってるなあと思う部分があって、こっちにはそういうところがほとんど無いから好きだ。

まあ『サプリ』話はいずれできたらするとして、働きマン、深さと広さが1巻よりもグっと拡大してきてなかなかいい感じです。松方以外のキャラクターの掘り下げもかなり深いし。

特にこわもてマン、いいですねえ彼。マンガ編集者もので傑作『編集王』を越えるのは難しいと思いますが、彼個人としての理想とする生き様を仕事のレベルで体現しようとしているのは読み応えがあっていいなあ。一方、マンガ雑誌から大衆週刊誌に移ってきた、知らないところに来ちゃったマンも面白い。「ギョーカイモノ」としては水準をはるかに高く越えた作品ですなあ。

ただそこに恋愛まで入れるとどうしてもグジャっとしたりウジっとしてしまう部分があって、この物語にその要素はどれくらい必要なんだろうかと思ってしまった。しかし共感するところは多々あって、松方の恋人のセリフである、

じゃー どうして
どうして いつもそんな とこまで やんだよ

やれてない ことが つらくなるよ
ヒロのせいじゃ ないって わかってても

俺は そこまで できないんだよ
ヒロ見てると できない自分が ダメに見えて 仕方がないんだよ

にはそこはかとなく共感するところがあって、けっこうシンクロしてしまった。「あ〜」としかいえないわこれは。こういう気持ちっていうのを、こんなにわかりやすく描かれていていいんでしょうか。いいんだろうけど。いやあ。なんかなあ。すごいなあ。

一定レベル以上の高さの仕事をどんどんやっていこうとすれば、プライベートが犠牲になってしまう部分っていうのはどうしても一般社会ではあって、理想を言えばそういう労働事情っていうのはどうかと思うし自分の根本的な価値観とはマッチしえないんだけど、まあそういう社会共同体は、好むと好まざるとにかかわらず、あるんだよね。「働く」ということに対してイロイロな価値観を提示してくる興味深い作品ですなあ。編集長もバツイチっていう設定だしなー。これ、仮に松方が病欠した場合、業務がちゃんと回るんですかね。そういう個人の要素に重きを置いた業務スタイルっていうのは会社を回していく上ではやっぱりまずくって、代替不可能性をおおすごいと尊重するのは株主の観点からすれば間違ってはいると思う。

あと最後のエピソードのオヤジマンはちょっと展開がはやすぎたんじゃないかと思った。ギリギリのテンポをちょっと越えてるなという。B+