4時のオヤツ 杉浦日向子

4時のオヤツ

4時のオヤツ

杉浦日向子のかもし出す空気が好きだ。雰囲気が好きだ。粋、という一言では言い表すことができない。その死すら美しい受け入れ方のように思えてしまう彼女の美意識と信念は、人間にとっての普遍的な価値がある何かである。

というわけで、夜明け前、夕暮れ時という4時。4時に食べるちょっとしたおやつは、おいしい。東京を中心とする色々な場所での、色々なおやつ。短編小説のような、全編異なる登場人物の会話。この会話が実にいいんですねえ。軽妙で、味があって。はぐれた飼い犬を探す一コマであったり、家でほっこりしているときの一コマであったり、あわただしい日常の一コマであったり、その「切り取り」描写が達人的にうまい。この人はマンガも面白いけど、文章もいいなあ〜とニコニコしながら読んでしまうのであった。これ宵の口とか夕方読むと絶対おやつが食べたくなるぜ。素晴らしい! 鈴木雅也さんの撮った写真が何気なく添えられていて、これがまたいいんだなあ。食欲、いや「オヤツ欲」がむらむらと沸いて来ます。アラーキーが撮った巻末の妖艶なる杉浦さんの写真も色気たっぷりで凄いと思った。文庫版の表紙もカワイイですぞ。A-