逆説の日本史 13 近世展開編江戸文化と鎖国の謎 井沢元彦

言霊・怨霊・ケガレ思想という、日本の歴史において重大なキーワードとなっている概念を基盤に、改めて日本史を検討していくというシリーズ。作者が上記キーワードを軸に考えると、「結果的に」学会の通説とは大きくことなる見解が多くなることから、「逆説」という言葉が入っているのではないかと思われる。
このシリーズずいぶん読んでますけども、相変わらず面白い。今回は、日本はなぜ鎖国という政治を行ったのか、徳川家の将軍の資質について、綱吉は暗君だったのか名君だったのか(作者の見解では後者)などが大きなテーマとして語られる。鎖国路線への道と、徳川綱吉名君論はなるほどなーと思った次第。あと、中国が靖国参拝反対する大きな思想的根拠として「儒教文化」を挙げていたのはこれまた新鮮な意見かつ説得力があるものだった。日本は「和」中国は「孝」、アメリカは「愛」の国なんですなあーとぼんやりしみじみと思った。

この人の思考軸は物事のほかのことを考える上でも役立つ。特に言霊思想は、縁起をわりと重視する日本人によく馴染む概念であり、災いは、それが実際に起こってからしか対策を立てられない(そのことを想定すると本当に起こるから、という言霊思想によるもの)というのはほんとそうだなーと。
どうでもいいけど、前の巻で著者近影はスキンヘッドだったはずなんだけど、この巻の著者近影ではまた毛が伸びてて普通の髪形になってた。なんだったんだろう。B+

まあ、こういうものは両論併記的に読むのも大切ですから、以下のサイトなんかも読んでみると重層的に読解できそうです。
参考 納得できない『逆説の日本史』