さくらん 1巻 安野モヨコ

さくらん

さくらん

もうすぐ映画公開だね、さくらん土屋アンナさんですか。

マンガ『さくらん』ですが、これは女郎の生き様を描いた作品。面白かった。かつて杉浦日向子は空気・世界ごと「江戸」を描いた。一方、安野モヨコは、吉原で生きる女の情念ごと「江戸」を描くことに成功している。遊郭で働くことの意味、人生。美しさとは。色んなテーマを包括しながら全てパワフルに詰め込まれている。

とにもかくにも安野作品は怒涛のパワーがあるなーほんとに。眼前に「これを読めええやああああ!」とたたきつけられるようなパワーを持ったマンガを描く人だなあと思う。こういう「読め読めパワー」を思いっきり出してるマンガ家って、女性ではわりと少ないんじゃないかな。『ハッピー・マニア』もそうだし『働きマン』もそうだし、読み手に一定のパワーが要求される種類の作品であって、電車1区間内で読む『こち亀』とはまた違った性質のマンガであることよ。

顔の面積の半分を占めようかという勢いの安野作品の登場人物の「瞳」はこの作品でも健在で、力強い意志とエネルギーに満ちている。色恋に長けた若旦那に恋に落ちてしまう主人公きよ葉は、痛い目にあってもつらい目にあっても再び立ち上がり遊郭に戻る。泥臭いパワーと、ほれたはれたのむんむんした世界が濃厚なムードを漂わせている。ページのフチがなまめかしい色なのも工夫があっていいね。B+