ズッコケ中年三人組age41 那須正幹

内容(「BOOK」データベースより)
ズッコケ三人組のマドンナ北里真智子が29年前と同じく突然あらわれた!政界・財界に多くの顧客をもつ美しいカリスマ占い師となっての登場だ。国際的なスパイ組織に追われていた真智子を救った三人組の心はあの頃と同様にふるえた―。

なんじゃこりゃ? と思い読んでみた。児童小説のベテランなだけに非常に読みやすい文章でさくさくと読了。ズッコケ三人組が41歳になり、それぞれの人生を歩んでいるのだ、というところから物語が始まる。ハチベエが胃の検査をしたりメタボリック症候群を気にしたりと、中年の健康が一つのテーマになっているらしい。後日モーちゃんも検査を受け、見事メタボリック症候群と診断され妻子と共にウォーキングに励んでいる。

物語の軸は、カリスマ占い師となった北里真智子が再び3人と出会い、やがて起こるトラブルに取り組む、というものなんだけど、僕は3人組の41歳社会人としての生活話としてけっこう面白く読めた。コンビニの店長であるハチベエ、中学校の教師をしているハカセ、会社が倒産し地元に帰ってきて仕事をしているモーちゃんの、それぞれの家庭・社会生活が説得力のある描写でなされていて良かった。ハカセは大学院まで進んだらしい。

終盤、クライマックスを過ぎ、残り20ページくらいになっても事態が一向に収拾しないので少しハラハラしたが、結局なるほどと納得のいくオチではなかったのが残念。「そういうことはありうるかな。ありえないとは言えないな。」程度の説得力で、やや不満が残った。まあ、ハリウッド映画のように年老いて家族を持ったヒーローが、ピンチに再び全盛期の力を復活させて大活躍する、なんてことは無くても全く構わないけれど、さすがに「振り回された3人組は結局なんだったんだ?」というのはちょっとしんどい。来年は42歳になった3人の物語だそうで、毎年1冊出る予定らしい。大きな事件を起こさずとも、生活譚を描いてくれれば僕はわりかし満足だ。ねじめ正一の『高円寺純情商店街』みたいな感じは好きだったので、ああいう路線も良いと思う。B